朝倉あき 14年に一時休業の思い「あの時間があったから」学業との両立に苦悩、一番の応援者・祖母の急逝

[ 2018年11月11日 13:15 ]

朝倉あきインタビュー(下)

日曜劇場「下町ロケット」で佃製作所技術開発部の“紅一点”加納アキ役を好演している朝倉あき(C)TBS
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 女優の朝倉あき(27)がTBS日曜劇場「下町ロケット」(日曜後9・00)にレギュラー出演。前作に続き、佃製作所技術開発部の“紅一点”として作品を彩っている。2008年のデビュー以来、順調にキャリアを積み重ねてきたが、学業との両立に悩む中、一番の応援者だった祖母が14年に急逝。「しばらくは何も考えられず、考えようともしませんでした。しっかり将来のことを考える時間が不可欠でした」と1年間、休業。その理由を明かした。「少なくとも昔よりは空回りせず、落ち着いて仕事に向き合えていると思います。それは間違いなく、あの時間があったからだと感じています」。自分を見つめ直した時間が今に生きていると当時を振り返った。

 俳優の阿部寛(54)が主演を務め、経営難に追い込まれた下町の町工場・佃製作所がその技術力により困難を打ち破る様を描き、列島に感動を巻き起こしたエンターテインメント巨編の3年ぶり続編。今回、佃製作所は自転車・自動車・船舶・鉄道・エスカレーターなどに組み込まれている部品「トランスミッション(変速機)」の開発に挑む。

 朝倉が演じる若手エンジニア・加納アキは大学院の修士課程終了後、家庭の事情により研究を断念し、佃製作所に入社。少々おっちょこちょいだが、粘り強さはピカイチ。前作は立花(竹内涼真)とともに人工心臓弁「ガウディ計画」プロジェクトに、今回はトラクターのトランスミッションに使うバルブ開発チームに登用されている。

 ――2006年「東宝シンデレラオーディション」の最終選考に残り、芸能界入り。10年のNHK連続テレビ小説「てっぱん」などに出演されてきましたが、14年から1年間、芸能活動を休止されました。

 「中学生の時に祖母の薦めでオーディションを受け、縁がつながって、この仕事をするようになりました。頂けるお仕事はうれしく、期待に応えたい一心で頑張ってきたつもりです。しかし、学業との両立が私は簡単ではなく、仕事においても満ちた気持ちで臨めていない感があり、ずっとこれでよいのかという迷いがありました。それでも、さらに求めていただけることへは本当にありがたく…、でも、そう感じるのと同時に、気持ちが追い付いていかないことに、焦りと、情けなさを、強く持っていました」

 「器用とか不器用とかの性質にもよるのかもしれません。同年代でももっと忙しく、そして学業面も上手に両立されている方たちがいて、私も同じようにできるはずと思っていました。自分の器を広げたくて、もっと学び、たくさんの友達も作れるよう、高校卒業後には大学に進学したのですが、仕事面でのこともありますが、休学しては復学し、また休学。そのまま復学をすることはなく…。そんな中で足掛け3年費やしたアニメ映画『かぐや姫の物語』はようやく2013年11月に日の目を浴び、万感の思いでした。年明けには新しい映画の撮影が予定されていましたが、何かの理由で直前に無期延期となり、しばらく先の予定はなくなりました。そして年が明けたそんな時に、私の一番の応援者であり、芸能活動意欲の絶対的支柱でもあった祖母が急逝したのです。しばらくは何も考えられず、考えようともしませんでした。我に返ってから、かねてからの自分の迷いや葛藤も合わせて、このままの状態で仕事に向き合ってはいけないと感じ、また、進学した大学の同級生たちはこの春に卒業し、さらなる未来を選択しているんだな、などと巡らせると、ここでしっかりと整理する時間が自分には必要だと思ったんです。休業中にはアルバイトなどもしてみたり、その社会経験も有効なことではありましたが、それよりも、やはりしっかり将来のことを考える、煽られることのないゆとりのある時間が不可欠でした。その上で、この仕事が好きであるということが再確認できて、仕事を続けることが今までの自分を肯定してあげられることだとも理解したのです。今でも迷ったりすることもありますが、少なくとも昔よりは空回りせず、落ち着いて仕事に向き合えていると思います。それは間違いなくあの時間があったからだと感じています」

 ――朝倉さんが主演された、そのアニメ映画「かぐや姫の物語」の高畑勲監督が今年4月にお亡くなりになりました。

 「当時を振り返ると、私に対しても丁寧な言葉遣いのお話の中に、果てしない探求心と鋭い視点を感じさせる、そんな高畑さんの話しぶりを思い出します。作品のことではない他愛のない話の中ででも、導かれた答えがたとえ一つあったとして、本当にそれだけか?それは正しいか?こういう考え方はないだろうか?と自然と常に考えを馳せる方でした。また挑戦もやめない方で、演技で私が思いついたことや、誰かがふとこぼした小さなアイデアなども聞き逃さず『それ、やってみましょう』『これもやりましょう』『やってみてください』とすかさず仰って、私も含め周りが驚いたりしたこともありました。そういった迷いなど全く感じられないご様子を思い出しては、私も立ち止まっている場合じゃない、トライ&エラーを繰り返していかなければ、と強く思います」

 ――モスクワ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞に輝いた主演映画「四月の永い夢」が今年5月に公開され、「下町ロケット」も含め、ご活躍の1年。来年は「七つの会議」(2月1日公開、監督福澤克雄)、オムニバス短編集映画「21世紀の女の子」(2月8日公開)の「Mirror」(監督竹内里紗)も控えます。今後の女優業の展望について教えてください。

 「見ていてくださる人がいる、応援してくださる人がいる、ということと、そのありがたさや感謝の思いを改めて強く感じた1年でした。たくさんの方に温かく見守ってもらえているのを感じ、何度も何とも言えない強いパワーが胸に満ちました。応援してくださる方々のためにも、来年もさらに大きく実を結びたいと思います。出会えた作品には感謝を、そして勇気を持って挑戦することをブレずに自分の軸にして、たくさんの出会いを素晴らしいものにしていきたいです。よく見聞きし、理解し…自分の出来ることをしっかり把握しながら、少しずつお芝居の幅も広げていけたらと思います」

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