佐野史郎の役者論 時代映す鏡であるべし 還暦過ぎ「やっとスタート地点」

[ 2018年10月14日 11:00 ]

「顔がでっかいところがお気に入り」と優しい笑顔を見せる佐野史郎(撮影・久冨木修)
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 【俺の顔】演じる役はどれも強烈なインパクトを残す俳優の佐野史郎(63)。舞台で俳優人生をスタートさせてから40年以上、「時代を映す鏡」であるドラマなどの作品で、さまざまなキャラクターを生み出してきた。還暦を過ぎてもなお「撮影現場は学び舎(や)」と貪欲。妖怪や怪獣にも夢中な佐野ワールドをのぞいた。

 顔で気に入っているところを尋ねると「でかいところですかね。でかい顔しやがってってね」とユーモアを交えながら語る。クセの強い役を演じることが多いが、素顔は柔和で目が優しい。その印象を伝えると「顔が大きいから、それぞれのパーツが小さいんだよね」と照れ笑いした。

 ドラマや映画のオファーが絶えず、10月期はテレビ東京開局55周年特別企画ドラマBiz「ハラスメントゲーム」(15日スタート、月曜後10・00)に出演。スーパー業界大手の老舗会社を舞台に、企業のコンプライアンスがテーマの作品で「実際に日々そういう報道ばかりだし、タイムリーですよね。特に僕らの世代ではハラスメントって言われてもどこがと思う人はたくさんいらっしゃるでしょうし、ドラマを通して問いかけることができればと思います」。

 演じるのは社長の失脚を狙い画策する、ひとクセある取締役。怪演が期待されるが、役に取り組む上で心がけるのは、作品が生まれた背景や時流を咀嚼(そしゃく)することだ。「ドラマに限らず芸能は時代を映す鏡だと思うので、自分の役というよりも、なぜこの企画が立ち上がったのかということが一番興味がある。そこが腑(ふ)に落ちて、奥底に流れているメッセージを理解できないと、役柄が表面上のことになってしまうので」

 社会的ブームを巻き起こした92年「ずっとあなたが好きだった」(TBS)は、まもなく幕を閉じる平成のドラマ史に名を刻む1作。同作で演じたマザコンの「冬彦さん」も、あの時代の産物だった。「バブル経済崩壊時の一体何を信じたらいいんだろうという時に、本当に好きだと思う心、それしかないじゃないかということをメッセージしていたと思います。時代が変わっても変わらないものが流れていればずっと残るし、『ハラスメントゲーム』もそうあってほしいと思います」

 子供の頃からドラマや音楽、怪獣映画や水木しげるさんの妖怪漫画に熱中。医師の家系の長男だが、高校で進路を決める際に表現の道に進むことを選んだ。演出家の出口典雄氏(78)の劇団「シェイクスピア・シアター」や唐十郎氏(78)の「状況劇場」で学び「とにかく師匠に恵まれました。その時だけのブームではない物の見方や感じ方を教わった気がします」。

 今年はフジテレビ系「限界団地」で連ドラ初主演を果たし、NHK大河ドラマ「西郷どん」の井伊直弼役も話題になった。「還暦を過ぎて役どころも変わってきたし、やっとスタート地点だと素直に思います。国を動かした実在の人物を数多く演じて、役柄を通して学ぶことが多いので、撮影現場は僕にとっては偉大な学校。学び舎としての現場というのは、これからも続けていきたいし、そういう役柄もまだまだやりたいです」。故郷の島根県松江市の依頼で始めた小泉八雲作品の朗読もライフワークとして続ける。

 バンドを組んだり特撮作品にも造詣が深く、ツイッターには音楽、怪獣、妖怪など多彩な話題が並ぶ。

 「小学生の時から熱中していたことをだいたい仕事にしていて、人並み外れて好きだったんだなと最近分かりました。SNSの時代になって、昔で言えばアンダーグラウンドの秘密結社的な同志が表に出てよくなった感じがして、たがが外れちゃってね」と笑う。読書も好きで「仕事と関係ない幻想文学とかをゆっくり読む時間は趣味と言えば趣味かな。あまり表にならない抹殺された歴史とかも興味があるし、出雲の人間だから古事記とか、古代からの語られない闇の世界は好きです」。語り口は穏やかだが、熱量はすさまじく、話しだすと止まらない。ユニークで奥深い個性が、唯一無二の俳優を形づくっている。

 ≪妻は女優の石川真希「楽しくやってます」≫「ハラスメントゲーム」は社内に起きるさまざまなハラスメント問題を、唐沢寿明(55)演じる主人公たちが奇抜なアイデアと手法で解決していく作品。常務役の高嶋政宏(52)とは音楽が共通の趣味で「撮影の合間はマニアックなロックの話をしています」と笑顔。妻は女優の石川真希(58)で一人娘がいる。家庭では「おとなしくしてますよ。音楽や映画の話ができる家族なので、楽しくやってます」と明かした。

 ◆佐野 史郎(さの・しろう)1955年(昭30)3月4日生まれ、島根県松江市出身の63歳。高校卒業後に上京し、75年に劇団「シェイクスピア・シアター」に創設メンバーとして参加。80年に唐十郎氏の「状況劇場」に入団し84年に退団。86年林海象監督の映画「夢見るように眠りたい」で主演で映画デビュー。92年にTBSのドラマ「ずっとあなたが好きだった」で大ブレーク。主な出演作はドラマ「MOZU」、映画「太陽」など。

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