阿部寛「下町ロケット」続編「悩みました…安易には」“視聴者を裏切らない”熱演の裏に“陰の役作り”

[ 2018年10月14日 15:00 ]

日曜劇場「下町ロケット」第1話の1場面。主演を務める阿部寛(C)TBS
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 俳優の阿部寛(54)が再び主人公・佃航平社長を熱く演じるTBS日曜劇場「下町ロケット」(日曜後9・00)は14日、25分拡大でスタートする。2015年10月期に放送された大ヒット作の3年ぶり続編。阿部は「安易に引き受けるわけにはいかないという思いがあったので、いろいろと悩みました」としながらも「前回の視聴者の皆さんを裏切らない。それだけですね」と気合十分。その実直さで、新キャストも加わった大所帯を引っ張る。

 経営難に追い込まれた下町の町工場・佃製作所が技術力により困難を打ち破る様を描き、列島に感動を呼んだエンターテインメント巨編。「半沢直樹」「ルーズヴェルト・ゲーム」「陸王」に続き、池井戸潤氏の原作は5度目のドラマ化になるTBSだが、続編制作は初。今回も、おなじみの伊與田英徳プロデューサー&福澤克雄監督のゴールデンコンビを中心に制作。第2弾の原作「下町ロケット ゴースト」(小学館)は7月20日に発売されたばかり。

 前作の最終回は平均視聴率22・3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)をマークし、15年の民放連続ドラマ1位を獲得。阿部も「かなり反響を頂いたので、その責任もありますし、2作目を安易に引き受けるわけにはいかないという思いがあったので、いろいろと悩みました」と打ち明けたほど。それでも池井戸氏の原作や福澤監督の演出への信頼からオファーを受諾した。

 今作は、佃製作所が開発したバルブシステムを使用している大企業・帝国重工の業績が悪化。純国産ロケット開発計画「スターダスト計画」が次回で終わるかもしれないと、帝国重工宇宙航空開発部部長・財前(吉川晃司)から告げられ、佃(阿部)はショックに沈む。その中、佃製作所の経理部長・殿村(立川談春)の父・正弘(山本學)が倒れる。殿村の実家は300年続く新潟の農家で、父の看病と畑仕事の手伝いのため週末ごとに帰省。殿村を見舞った佃はトラクターを運転している殿村を目にし、あることに気付く。宇宙から大地へ、新たな物語が始まる。

 続編への心掛けは「前回の視聴者の皆さんを裏切らない。それだけですね」と短い言葉でキッパリ。佃社長さながらの語気に圧倒された。役作りについても工夫や苦労など多くは明かさず「佃製作所が挑む事業も変わる中、佃という人間の表現の仕方も変わってくると思いますが、そこは脚本と演出に従おうと考えています。自分で『こうしよう、ああしよう』と決めてかかると(表現が)硬くなってしまうので。決めてかかるのはやめています」と身を委ねる。

 ただ、そこに至るまでに、キャラクターを徹底的に掘り下げる阿部の模索がある。伊與田プロデューサーは「僕が現場に行けなかったりすると『佃なら、このセリフはこういうふうに言ったらどうでしょう。こういうエピソードを入れたらどうでしょう。伊與田さんと監督で相談してください』といったメールを、阿部さんから頂くことがあります。最後は『監督が決めてください』と委ねるんですが、ご自分からいろいろなアイデアを発信される。そこはプロ中のプロ。プロデューサーや監督は佃だ、財前だと、多角的に登場人物を見ないといけないので、佃のキャラクターを一番分かっている阿部さんからご提案を頂けるのは非常にありがたいです。社員の前などで熱弁を振るう“演説”のシーンなどは、例えば、頭から熱を帯びるのがいいのか、途中からがいいのか、阿部さんから早めに現場に入って監督と話がしたいということもあります」と“陰の努力”を証言した。

 「TRICK」「新参者」などの大ヒットシリーズを生んでいる阿部だが、続編へのプレッシャーは?と尋ねると「続編は難しいんですよね。自分の力だけじゃ、どうにもならないんです。キャスト、スタッフみんなが同じ気持ちにならないといけませんから」。チームワークは3年前より強固になっているだけに、心配ない。

 中央大理工学部在学中の1983年、景品の車欲しさに応募した「ノンノボーイフレンド大賞」で優勝。「メンズノンノ」の表紙を3年半連続で飾るなど、カリスマモデルとしてバブル期のモデル人気を牽引した。87年、映画「はいからさんが通る」で俳優デビューしたが、鳴かず飛ばず。他のキャストと調和しにくい高身長と役柄が限られる顔の濃さが、役者としては不利に働いた。

 転機は93年。故つかこうへい氏の舞台「熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン」の主役に抜擢され、男性とのキスシーンや卑猥極まるセリフもある「元棒高跳び選手のオカマ刑事」を熱演。好評を博した。その後、ドラマ「HERO」「結婚できない男」、映画「歩いても 歩いても」「テルマエ・ロマエ」など、数々の名作・話題作を彩っている。

 12日放送のTBS「A―Studio」(金曜後11・00)に出演。司会の笑福亭鶴瓶(66)から16年の京都国際映画祭で三船敏郎賞に輝いた話題を振られると「賞は忘れちゃうんですよね。(受賞したことを)あまり覚えていないようにしようと思っているんです。“次も獲りたい”と思っちゃわないように。なぞりたくない。芝居もそう」と語った。

 その真意は「新しいことに挑戦していきたいということですよね。それは常に思っています。いろいろな作品、役をオファーしていただけるのは非常にうれしいです」。「下町ロケット」も「みんなを総まとめにして一丸で立ち向かう社長役は演じたことがなかったので、僕にとっても初挑戦。前回も今回も新たな挑戦なんです」と位置付けた。

 佃の新たな夢が描かれる続編。最後に、阿部自身の夢は?と問うと「次のお話が頂けて、また皆さんに喜んでいただけるような、感動していただけるような作品になれば、夢が叶ったということになるんじゃないでしょうか。演じたい役?僕は何も考えません。頂ける役は、すべて自分にとって新しい役だと思っていますから。オファーしていただける役は、自分の想像を超えてくるんです。だいたい自分でこうしたいと考えると、自分に得な役しかなりませんからね。『下町ロケット』のように、視聴者の皆さんが元気や勇気をもらってくれる作品になれば、それは役者冥利に尽きることだと思っています」

 04年「ブラックジャックによろしく」スペシャル以来、「逃亡者 RUNAWAY」「新参者」シリーズ、「下町ロケット」と約15年の付き合いになる伊與田プロデューサーが「役に対して本当にまじめ」と語る阿部の実直さに触れた。

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