「和製マイケル」三浦大知 ゲームもダンスもコツコツレベル上げ

[ 2017年4月18日 11:00 ]

夢中論

鏡の前でダンスのイメージを膨らます三浦大知
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 日本人離れした切れ味鋭いダンスと歌で「和製マイケル・ジャクソン」と呼ばれ、人気急上昇中の三浦大知(29)。9歳でデビューしてから20年、パワーの源にしてきたのはテレビゲームだ。コツコツ着実にレベルアップしてクリアすることが楽しくて仕方がない。ダンスも“相棒”の鏡を前に普段から一つ一つの動きをチェック。小さな積み重ねが世界水準のパフォーマンスを生んでいる。

 大知は夜な夜な狩りに繰り出す。真っ先に向かうのはテレビ画面に映る深い草むら。茂みに身を隠し、口笛を吹く。その音に反応して寄ってきた獲物を弓で射て仕留める。

 「最近、夜中はずっと草むらにいますね。ゲームの中で。睡眠時間を削って狩りをしている。一番のストレス解消法。とにかくリラックスできるんですよ」

 リビングに座り、画面の明かりが大知の顔を照らし出す。今取り組んでいるのは新作のアクションRPG「ホライゾン ゼロ・ドーン」。獲物を堂々と正面突破で狩るわけでも、豪快に剣を振り回して敵を一気に倒すわけでもない。ゲームの主人公を鍛えるため、この地味な「レベル上げ」と呼ばれる作業を、何度も何度も繰り返す。

 「嫌いじゃないんですよ。どんどんストーリーを進めていく人もいるけど、僕は十分鍛えてからクリアしていくタイプ。地道に何かを乗り越えていくのが好きなんです」

 ダンスと歌も同じだ。都内にある所属事務所のスタジオ。鏡張りの一室で、鏡に映る自分の踊りをチェックしながら声を張り上げる。レッスンはこの繰り返しだ。

 「歌って踊るための筋肉って、歌いながら踊ることでしか鍛えられないと思っている。だから歌と踊りを別々に練習しないし、筋肉トレーニングもやりません」

 指先まで神経の行き届いたダンスを、息も切らさず歌いながら踊る。米歌手ビヨンセ(35)の振付師ら国内外の一流のプロが絶賛する世界水準のパフォーマンス力は、歌って踊る反復レッスンで培ってきた。一方で、レッスン室の片隅にはひとくちチョコレートがどっさり。「甘い物?ガンガン食べますよ」。体脂肪率は2桁台。無用な節制はしない。常に自然体だ。

 注目を集めたのは昨年5月だった。テレビ朝日「ミュージックステーション」に初出演し、バックダンサーと息ぴったりのシンクロダンスが話題に。同10月には人気シリーズ「仮面ライダーエグゼイド」の主題歌に自作詞「EXCITE」が起用され、1月に自身初のオリコン1位を獲得した。

 「ずっと続けてきたことが昨年注目してもらえたと思っている。やっていることが変化して注目されたんじゃなくて、積み重ねが認められただけ。だからこれからもやることは一緒です」

 浮つくことなく、マイペースで我が道を行く。

 6歳からダンススクールに通った。97年、9歳の時に男女7人組「Folder」のメインボーカルとしてデビュー。天才少年と言われたが、変声期に入ったため00年に活動を休止。05年にソロデビューするもしばらく不遇の時代が続いた。「一日中、ほとんど動かないでゲームをしている時もあった。暇は怖い」と振り返る。

 ただ、焦りはなかった。コツコツとパフォーマンスを磨き、08年からは自分でダンスの振り付けを考えるようになった。周囲は「自分で振り付けるようになって表現力が高まった」と明かす。

 そんな成長のそばにはいつも鏡があった。この日のインタビューでも大知はレッスン室の鏡にスマートフォンを立てかけ、踊る姿を撮影した。「常に頭の中に小さい自分がいて、いつもなんとなく踊らせている。それを実際にここで踊ってみて振り付けを作るんです」。鏡に向かって踊り「ここは動きを止めよう」などと試行錯誤。納得できた振り付けを録画保存し、これを繰り返して一曲分を作る。

 最近は本業以外でも活躍し、昨年にはFolderの元メンバーで女優の満島ひかり(31)とNHKドラマ「トットてれび」で共演した。

 「ひかりは歌から演技に表現方法を変えて努力して大女優になった。ひかりの活躍は刺激になってきたし、一緒にドラマのシーンを作れたというのは、この20年の中で大きな出来事だった」

 互いに自分という鏡を磨き続けてきた。諦めずに切磋琢磨(せっさたくま)した仲間との共演は何よりもうれしかった。

 経験値を上げ、一つ一つ課題をクリアする。1人になれる時間はリビングでゲームのコントローラーをガチャガチャいじる。8月に30歳になるが、そのスタンスは変えない。「20代を頑張ったから30代からがとても楽しいだろうし、40代を楽しむために30代も地道に頑張りたい」

 コツコツやっていると、きっと何かが起こる。大知はそんな時間を楽しんでいる。

 ≪本家のように「唯一無二」を追及≫非凡な歌とダンスで「和製マイケル・ジャクソン」と称されるが、自身もマイケルさんに憧れている。親に初めて買ってもらったのはアルバム「ヒストリー」(95年)。今でもケースがボロボロになったCDが自宅にある。影響を受けたのは「ブラック・オア・ホワイト」(91年)のミュージックビデオだ。マイケルさんが世界各地で、その土地の伝統的な踊りを次々と披露していく姿を見て「どのダンスをやってもマイケルなんですよ。マイケルが表現すると全てマイケル色になって、オリジナルになる。だから僕も三浦大知にしかできないオリジナルなことをやっていこうと思った」。マイケルさんを含め、人のまねは一切しない。大知オリジナルにこだわっている。

 ≪8月に20周年 イベント続々≫8月にデビュー20周年を迎える。6月3〜17日に全国5都市でファンクラブイベントを開催予定で、先月発売したアルバム「HIT」の収録曲を中心に披露する。「今年は皆さんに直接会える機会をたくさんつくりたい」と抱負。5月4、5日には所属事務所の男性アーティストによる音楽祭「RISINGPRODUCTION MENS〜5月の風〜」(千葉・舞浜アンフィシアター)に出演する。

 ◆三浦 大知(みうら・だいち)1987年(昭62)8月24日、沖縄県生まれの29歳。Folderのメインボーカルとして97年8月に「パラシューター」でデビュー。00年に活動休止し、05年に「Keep It Goin’ On」でソロデビュー。12年に初の日本武道館公演を開催。14年に欧州最大の音楽賞「MTV EMA」の日本代表に選出された。15年元日に一般女性と結婚し、16年12月に長男が誕生。

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