ラジオはやはり素晴らしい!

[ 2016年11月20日 10:00 ]

 【牧元一の孤人焦点】妙齢の女性のものと思われる艶っぽい声がラジオから聞こえてきた。優しく胸をなでられるような感じが心地よい。これはいったい誰の声なのだろうと思いつつ、しばらく聞いていると「本日のお相手は松田聖子です」というナレーションが流れた。松田聖子だったのか!?最近はテレビで見る機会が少なくなったレジェンドアイドル歌手がラジオのパーソナリティーを務めていた。面白い。ニッポン放送「オールナイトニッポン MUSIC10」。聖子は月に一度この番組に出演しているのだという。ラジオの中の聖子は「(次回の自分の放送は)年内最後なんですね。本当に早い」と、年末が迫って来た気分を率直に語っていた。テレビにはない親近感がそこにあった。

 近頃、ラジオを聞く機会が増えた。昨年12月から「ワイドFM」でTBSラジオ、文化放送、ニッポン放送を聞けるようになったからだ。マンション住まいでAM放送は雑音が多くて聞きづらかったが、ワイドFMで音がクリアになった。さらに今年10月、インターネットの配信サービス「radiko(ラジコ)」に過去1週間以内に放送されたラジオ番組を聞くことが出来る機能「タイムフリー」が加わった。聞きたくても仕事で聞けなかった昼間の番組や、聞こうとして寝てしまった深夜の番組をフォローできて、とても便利だ。

 振り返れば、私はラジオに育てられた。小学生の頃、ニッポン放送で「欽ちゃんのドンといってみよう!」が放送されていた。萩本欽一がパーソナリティーを務め、リスナーからお笑いネタを募集して読み上げる番組だった。自室にこもって熱心に耳を傾けていた私はいつしか自分もネタをはがきで投稿するようになっていた。なかなか自分の作品は取り上げられなかったが、ある日、自宅の郵便受けにニッポン放送から私あての封筒が届いた。開けてみると、「ジャンプ賞」と記されたステッカーが入っていた。ジャンプ賞は「欽ドン」で読まれた良いネタに与えられるものだった。どうやら、私が番組を聞き逃した日に欽ちゃんは私の作品を読み、賞に選んでくれたようだ。どんなネタだったか全く覚えていないが、ステッカーを手にした時、あまりの感動にしばしぼうぜんとしたのを思い出す。

 後日、感動の余韻から欽ちゃんにファンレターを送った。詳しい文面は忘れたが、ジャンプ賞に選んでくれた感謝の気持ちを記した上で「欽ちゃんが尊敬している人は誰ですか?」と質問した。すると、翌年の正月、欽ちゃんから年賀状が届いた。それには自筆の短い一文があった。

 「尊敬しているのは、君たちのはがきだ!」

 あまりの感動に再びぼうぜんとした。自分が考えてはがきに書いて送ったネタに欽ちゃんが敬意を示してくれた喜び。それは私が後に新聞記者を志す原点だ。そして、それはラジオという特別な媒体があったからこそ生まれた。(専門委員)

 ◆牧 元一(まき・もとかず)編集局文化社会部。放送担当。プロレスと格闘技のファンで、アントニオ猪木信者。ビートルズで音楽に目覚め、オフコースでアコースティックギターにはまった。太宰治、村上春樹からの影響が強い。

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