「真田丸」秀吉好演の小日向文世 休み不要?「演技が唯一の生きがい」
NHK大河ドラマ「真田丸」(日曜後8・00)で豊臣秀吉を演じる俳優の小日向文世(62)。ドラマや映画への出演が増えた当初は、穏やかな人柄のキャラクターを演じることが多かったため“善人”“優しい人”の代名詞的な存在だった。しかし、近年は映画「アウトレイジ」の刑事役など“悪役”としての地位も確固たるものに。今作でも喜怒哀楽の激しい秀吉を好演する小日向に、演技に対する思いを聞いた。
子どものような無邪気さを見せる一方、怒りのシーンでは背筋が凍るほどの恐ろしさを感じさせる――。今作で描かれた秀吉は、演技の“幅”が要求される難役。だが、小日向は「楽しく、ストレスなく演じることができました。両極の感情を行ったり来たりすることが役者の醍醐味ですから。そういう意味では役者冥利に尽きましたね」と自身のクランクアップを前に清々しい表情で振り返った。
1977年、23歳の時、後に「コクーン歌舞伎」などで知られる演出家・串田和美氏(73)主宰の劇団「オンシアター自由劇場」に入団。中心メンバーとして活躍した。2000年、脚本家・三谷幸喜氏(55)作・演出のミュージカル「オケピ!」に出演。これが関係者の目に留まり、01年、フジテレビ「HERO」にメーンキャストの1人として起用され、大ブレーク。“稀代のバイプレーヤー”として、今や日本のドラマ界には欠かせない存在になった。
今回は「真田丸」で豊臣秀吉という重要人物を演じると同時に、TBS「重版出来!」(4月クール)へも出演していた。「秀吉という役をやっていながら民放のドラマにも出て、真田丸ファンから『秀吉でしょ?なんで他のドラマにも出るんだ』とか思われるんじゃないかなとは思いました。年間で出演するドラマの量をもう少し減らした方がいいんじゃないかとも。でも、大河ドラマの出演が終わってしまうと、やることがなくなってしまう。僕にとっては苦痛なんですよね。仕事を2つしていましたけど、とても楽しかったです」と多忙な日々を心から喜ぶ。
休日はあまり家から出ず、台本読みやセリフ覚えに費やすことが多いという。「役をもらって演じるということが、僕の唯一の生きがいみたいなものなんですかね。休みができたから海外旅行に行こうとか、ゴルフをしようとか、そういうのが一切ないんです。趣味がないんですよ。(役者仲間には)休みができたら旅行に行く人が多いですけど、僕の場合は違うんですよね」とは生粋の役者。
初めて顔を合わせた主人公・真田信繁(堺雅人)に「面白いところへ連れて行ってやる」と声を掛け、一緒に城を抜け出すなど無邪気な一面も見せる今作の秀吉。小日向は「大河ドラマでこんなにはしゃいで大丈夫なのか?」と初めは不安だったという。しかし、脚本を担当する三谷氏から「イメージした通りの秀吉です」と言われ、安心したことを明かす。「三谷さんが喜んでくれたので、安心して委ねられました。僕は62歳ですけど、無邪気さというものが出やすかったのかもしれない。劇団員時代に即興の芝居などで鍛えられましたから。それが役立ったのかもしれないですね」
秀吉の底知れぬ恐ろしさも見事に表現。その演技には「目の奥が笑っているようで笑っていない」と視聴者から絶賛の声が上がっている。だが、これを聞いた小日向は不思議そうな表情を浮かべる。
「笑っているつもりなんだけどなあ…。目の奥が笑ってない芝居なんて難しいですよね。(目の奥が笑ってないように見えるのは)きっと視聴者が『秀吉は笑っているようで実は相手の心を見抜いている』と想像してくれるているからだと思います。ということは、やはり三谷さんの台本のおかげです。きっと僕じゃなくて違う俳優でも怖いシーンになると思いますよ。ただ、僕はドラマや映画に出始めたときは柔らかい人の役が多かったから、そのギャップの影響があるのかもしれませんね」
天下統一を果たし、傍若無人に振る舞ってきた秀吉だが、第29話「異変」(今月24日放送)で老いが表面化。第30話「黄昏」(きょう31日後7・15)は大坂編のクライマックス。築き上げてきた栄光に陰りが見え始めた“天下人”を、小日向がどう演じるかが注目される。
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