近藤正臣“足でピアノ”今は「家宝」“NHKの顔”も謙虚「運」

[ 2015年12月6日 11:00 ]

流れるようにポーズを決める近藤正臣
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近藤正臣インタビュー(下)

 俳優・近藤正臣(73)がNHK連続テレビ小説「あさが来た」(月~土曜、前8・00)で、年輪を重ねた味のある演技を見せている。女優・波瑠(24)が演じる主人公の義父役。重厚さと軽妙さのバランスが秀逸で、脚本にはないアドリブを時に見せるのも魅力だ。高視聴率を続ける今回の朝ドラを脇でしっかり支える名優に話を聞いた。

 その名を広く世に知られたのは、1969年から71年までTBS系で放送されたドラマ「柔道一直線」への出演だった。主人公(桜木健一)のライバルを演じ、超イケメンのルックスと、足でピアノを弾く名場面などで、お茶の間に強烈なインパクトを与えた。今でも、近藤の名を聞くとあのドラマを思い出す人は少なくないだろう。

 「同じ世代、その下の世代からよく声を掛けていただきます。“近藤さん、今でも足でピアノを弾けるんですか?”と聞かれたら“年を取ったので今は上に立つこともできません”と答えます。最初は、うっとうしいと思ったんです。“いろんな役をやっているのになんでそれなんだ!?”と。でも、最近は本当に家宝だと思います。その時代の何かを後に残していくのは奇跡のようなことです。近藤正臣といえば“足でピアノ”。これは分かりやすいですよね」

 その名は73年のNHK大河ドラマ「国盗り物語」の明智光秀役の好演でさらに広まった。以後、78年の「黄金の日々」、2010年の「龍馬伝」など大河の常連となり、12年の「カーネーション」、13年の「ごちそうさん」など連続テレビ小説への出演も加わった。今や、NHKの重要なドラマに欠かせない顔とも言える。

 しかし、本人は至って淡々としている。

 「ここまで来られたのは、運です。27歳の時に“柔道一直線”に出させていただいて、それまで小さい地域の大会にしか出られなかったのが、やっと世間が認める大会、テレビの世界に出ることができた。あそこがスタートラインで、そこから先も結構運が良かったんです」

 もちろん、厳しい役者の世界を運だけで渡り歩けるはずはない。取材で相対した近藤には、24時間365日いつでも役者でいるという、徹底したプロ意識が感じられた。

 「いえいえ、役者でいるのは現場にいる時だけです。あとは、恥ずかしいけれど、本を読んでいます。戦国時代のものを読んで“こんなことがあって、こんなふうに滅んでいったのか”と思ったり、江戸時代の通貨のことを調べたり。楽しいから読むんですけど、結果的に役者の仕事に役立ちます」

 そんな生真面目さ、勤勉さ、繊細さが名優をつくり、そして、「あさが来た」を支えている。

 ◆近藤 正臣(こんどう・まさおみ)本名・川口正臣。1942年(昭17)2月15日、京都市生まれの73歳。66年公開の映画「“エロ事師たち”より 人類学入門」(今村昌平監督)でデビュー。以後、映画では「超高層ホテル殺人事件」(76年)、「夏服のイブ」(84年)、「妖怪大戦争」(05年)、「TAJOMARU」(09年)などに出演。来年1月3日に放送されるNHK時代劇「吉原裏同心~新春吉原の大火」(後7・30)では吉原を仕切る重要な人物を演じている。

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