仲間流「放浪記」は側転!自ら提案「一つの形見つけた」

[ 2015年10月15日 05:30 ]

「放浪記」で側転を披露する仲間由紀恵

 女優・仲間由紀恵(35)の主演舞台「放浪記」が14日、東京・日比谷のシアタークリエで初日を迎えた。12年に他界した森光子さん(享年92)が48年、通算2017回にわたり演じた名作が約6年4カ月ぶりに復活。カーテンコールで仲間は「半世紀かけて作品を育て上げた森光子さんに感謝したい」と笑顔で語った。

 劇作家・菊田一夫氏が作家・林芙美子の半生を描いた作品。森さん版の名場面は、小説「放浪記」が雑誌に掲載され、芙美子が喜びを表すシーンでの「でんぐり返し」だった。仲間版ではここが「側転」になった。仲間は両手を高く上げて左側に側転した後、続けて小さめにもう1回転。はじけるような躍動感に客席からは「お~っ」と歓声が上がった。さらに左右に転げ回り布団を叩いて歓喜を表現すると、大きな拍手が起きた。

 完成までには試行錯誤を重ねた。先月から始まった稽古で、森さんと同じでんぐり返しから布団へのダイブまでさまざまな動きを試して、演出家の北村文典氏と表現方法を探った。ある日、仲間が北村氏にスマートフォンで撮影した動画を見せた。「私、こんなのできるんです」。そこには華麗に側転する仲間の姿があった。「これはいい」と北村氏は決断。衣装の着物の裾が気にならないように、衣装担当も工夫して完成させた。本番前日の取材で仲間は「みなさんが楽しみにされているシーン。一つの形を見つけることができた」と安どの表情を見せていた。

 約3時間半で初日舞台は無事終了「放浪記は高い山のようで、頂上ははるかかなた。出演者それぞれ、その高みを追求し進化を続けてまいります」と誓った。東京公演は森さんの命日の来月10日まで同所で。その後大阪、名古屋、福岡など、来年1月まで計105公演を予定している。

 ≪「若さ」称賛≫森さんの元マネジャーの女性も客席から見守った。仲間版について「若さみなぎるいい作品だった」と称賛。あらためて、森さんの「でんぐり返し」について「最初は(作者)菊田一夫先生に言われて3回転はしていた。若いときは何げないシーンだったんだけど」と振り返った。そして、「(仲間版が)この先延々と続いていくと、本人も上(天国)から思っていると思う」と語った。

 ▽放浪記 林芙美子の波乱に満ちた若き日の放浪生活を描いた自伝的小説が原作。第1次世界大戦後の東京で生き抜く姿を描写。貧乏だが自由奔放で、仕事を転々としながら恋を重ね、ついには小説家として成功を収める姿を描く。3度映画化され、夏川静江さん(1935年版)、角梨枝子さん(54年版)、高峰秀子さん(62年版)が主演。舞台は劇作家の菊田一夫氏が手掛け、森光子さんは1961年の初演から09年まで主演した。

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