転機は「HERO」 正名僕蔵 “一目ぼれ女優”に会いたくて俳優に

[ 2015年7月23日 10:15 ]

ヒット作の出演が多い正名僕蔵

 黒縁メガネが印象的な俳優、正名僕蔵(まさな・ぼくぞう、44)。現在放送中のフジテレビ系連続ドラマ「HEAT」(火曜午後10時)にサラリーマン消防団員・鳴海雅彦役として出演しているほか、公開中の映画「HERO」でも個性的な検察事務官を演じている。テレビのない家庭環境で育ち、中学時代は“神童”と呼ばれた。舞台出身のバイプレーヤーだが、今ではヒットドラマに欠かせぬ存在になっている。

 役者としての経歴は23年。「HERO」をはじめ、「ショムニ」、「DOCTORS~最強の名医~」など、連続ドラマの中で欠かせないポジジョンにいる。「行き当たりばったりで、アルバイトをしながら続けていた時期もありましたから、辞めようかとくじけそうになったこともあります。でもそういう節目、節目に運良くいい作品に出合えた。運が味方してくれた部分もありますね」。

 そのルーツも興味深い。小学校3年生の時、家のテレビが故障した。以来約10年、テレビなしの生活が続き、情報源はもっぱらラジオのFM放送。当時の中高生をはじめ、若者が楽しみにしていた「オレたちひょうきん族」(フジテレビ)さえ知らなかった。その“影響”というべきか、中学時代の学業成績は「主要5科目は100点をとって当たり前。ミスして98点をとろうものなら、先生から“どうした?体調悪かったのか?”という会話が交わされるのが普通だった」という。ところが、県立の進学校入学後は勉強する意味を見失い、反抗期に突入。一転、家電量販店にわざわざ足を運び、売り物のテレビで多数のアイドルを輩出した「夕やけニャンニャン」(フジテレビ)を見るという、独特な青春時代を過ごす。

 俳優への道のきっかけは、松尾スズキ(52)が主宰し、宮藤官九郎(45)、阿部サダヲ(45)ら数多くの異能を輩出する「大人計画」の舞台から。しかし役者を志した動機は不純そのもの。「大学3年の頃に友人がたまたま連れて行ってくれたのが、大人計画の舞台でした。そこで客演されていた女優さんがとても可愛くて……一目ぼれですね。そのタイミングで劇団員募集のチラシを見まして、オーディションに受かったら、あの方とお会いできるのでは?と考えたんです」。若さならではの選択だった。

 それまで芝居経験はゼロ。“一目ぼれ女優”に会いたい一心で稽古を重ねたが、徐々に芝居の面白さに目覚めていく。「松尾さんの演出は当時とても厳しかったんです。私はそれまで人に厳しく怒られたことがなかった。逆にどうしてそこまで人を怒れるのだろうか?と気になってしまって、食い付いていくうちに、ずるずるとハマって行ってしまった感じです」。

 知り合いから「君の顔はザッツ・アジア顔、ハリウッドでウケる」と熱弁されたのをきっかけに、20代後半でハリウッド進出をもくろんだが、「よくよく調べたら、ロスは車社会でして」と運転免許を持っていないことを理由に断念したのも、今では笑い話の一つ。やはり正名の俳優としての転機は「HERO」というべきだろう。01年版では城西支部の守衛だったが、昨年のシリーズ第2弾で検察事務官へと転身。コンビを組む馬場検事役の吉田羊とのやり取りも見どころとなった。

 「居酒屋で一人飲んでいた時に隣のお客さんに声をかけられたり、街中で喧嘩していたカップルがたまたま私に気付いて“HEROの人ですよね!?”と、喧嘩が収まったり。認知度というものを初めて肌で感じて“HEROってすげえ!”と思いました」。魅力あふれる共演者の中でも埋もれることはない。むしろ、事務官・井戸秀二ファンも多い。

 「末席ではありましたが、城西支部のみなさんの芝居を間近に見ることができて、その空気を感じられたのは嬉しかった。木村(拓哉)さんからはセットにあったダーツに誘われて、未経験にも関わらず私が勝ってしまって“ボッキ―(正名のニックネーム)、お前はハスラーかよっ!”なんてイジってもいただきました」。俳優人生を大きく変えた作品への思い入れと思い出は尽きない。

 入口こそ不純な動機だったが、キャリアを重ねた今、俳優としてのスタンスは純粋だ。「知名度を上げたい、有名になりたいというのは二の次かもしれません。芝居する現場が好きで、舞台をやる時でも本番よりも稽古場が好きなタイプ。60歳になっても70歳になっても、一つの台本をみんなで囲んで、ああでもないこうでもないと悩んで相談し、面白いものを作りあげることができれば悔いはないです。ちょっとクサいですかね?」と照れ笑い。年の割には……と言っては失礼かもしれないが、とても純な44歳だ。(石井 隼人)

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