美輪明宏 衆院選を語る 弱い立場の人間が犠牲に 流れを止める1票を

[ 2014年12月12日 08:30 ]

衆院選について語る美輪明宏

 みなさん、14日は衆院選の投票日です。どの候補者に貴重な1票を投じるか、もうお決めになりましたか。まさか「どうせ選挙に行っても世の中は変わらない」などと棄権なさるおつもりですか。「生活が苦しい」「給料が上がらない」と嘆いてばかりでは、何も始まりません。有権者1人1人の行動が政治を変え、国を正しい方向に導くのです。

 ところで、今回の総選挙ですが、どこかおかしいとお思いになりませんか。消費税10%を延期するだけなら、もともと景気の状況を勘案するという条件が付いていたのですから、何も年末にわざわざ600億円もの血税を遣って国民に信を問う必要はありません。安倍首相は自身が唱える経済政策、いわゆる「アベノミクス」の是非を前面に打ち出し、解散という切り札を出しました。もちろん、それも大きな争点のひとつです。現状はと言えば、景気が上向いているのは大企業だけ。急激な円安で、原材料を輸入にたよる中小、零細企業はコスト増で四苦八苦の瀕死の状態です。国内の給与所得者の7割を超す人たちが中小企業で働いているのですから、有効な景気対策は急務でしょう。

 しかし、国民は経済問題ばかりに目を奪われてはいけません。実はその裏に日本の将来を揺るがしかねない重要な争点が隠されているのです。それは、「集団的自衛権」行使の問題です。首相は7月に、それまで歴代内閣が踏襲してきた「集団的自衛権は有してはいるものの、その行使については認められていない」との憲法解釈を自分勝手に変更する閣議決定を行いました。まさに、その集団的自衛権行使の前提となる自衛隊法改正を始めとする個別法案の審議がこれから国会で行われるのです。

 きっと首相は、国会で自分の都合よく安保関連法案を通すためには、この時期に選挙をしておくのが最も良いタイミングと判断したのでしょう。それは先ほど述べたように、大企業や株で儲けた富裕層、財界が大きな支援になり、選挙に負ける公算はほとんどないからです。ここで再び衆議院で安定多数の議席を確保しておけば、「国民からの信任を得た」と、任期の向こう4年間、首相はやりたい放題好き勝手に、きな臭い「積極的平和主義」とやらを進められると踏んだに違いありません。

 一強多弱の政治状況や出口の見えない不景気、戦争を知らない世代が増え、世間がどことなく第2次大戦前の空気に似てきたと感じるのは、私だけでしょうか。そして、いつの時代も犠牲を強いられるのは、弱い立場の人間なのです。こういう世の中で果たしていいのでしょうか。そういう流れを止めるのも、有権者みなさんの大切な1票に他なりません。よくお考えになり、投票所に足をお運び下さい。日本の未来を良くするも悪くするもあなたの責任なのですから。(美輪 明宏) 

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