悲劇から3カ月…クミコ 石巻で涙の熱唱
悲劇から3カ月、歌手のクミコ(56)が11日、宮城県石巻市を訪れ、「最後の恋~哀しみのソレアード」を歌った。3月11日に同市でコンサートを予定していたが、リハーサル直前に東日本大震災に見舞われ披露することができなかった。被災した人たちから温かい拍手で迎えられ、クミコは涙を抑えることができなかった。
クミコの心からの思いが届いた。「みやぎ生協 蛇田店」内に設けられた特設ステージ。500人を超える被災地の人たちを前に「INORI~祈り」「ともだち」「わたしは青空」など7曲を熱唱した。身にまとったオレンジ色のドレスは、石巻市民会館に置き去りにした衣装と同じデザイン。「次にまた石巻へ来る時のために」と、新たに用意したものだ。
「無我夢中で逃げた夜、裏山の避難先で見たドラム缶のたき火、月の色がこの色でした。私は一生忘れません」
それでも時折、悲しみをジョークにかえて会場を盛り上げた。最後は、アンコールで歌うはずだった「最後の恋」を披露。集まった人たちからの大合唱に目を潤ませた。
3カ月前、大きな揺れに襲われて全てを津波に流された。残ったのは自分の命だけ。この上ない悲劇を体験し、その後、自身の歌の無力さに思い悩む日々が続いていた。そんな時、石巻赤十字病院の松本圭輔医師から「音楽で元気と勇気をもらいたい」と、地元発の音楽イベント「SONGS from ISHINOMAKI」の出演依頼が届いた。
かなわなかったコンサートを主催した「みやぎ生協」の関係者からも手紙が届き、2人の女性スタッフが帰らぬ人となったことを知った。その文面には「あの震災がなければ、会場で皆さんと一緒に写真を撮っていたはずでした。本当に残念でなりません」とつづられていた。命を奪われた人のためにも、そして、自分自身のためにも「もう一度あの場所に行く」と心に決めた。
石巻市はこの日、梅雨の晴れ間。音楽の力、人の絆を再確認した一足早い夏の一日となった。「きょうは歌手としての私の再出発の日です」。最後にそう宣言すると、クミコの目から光るものが落ちた。
≪ご当地歌手らも参加≫ライブには、宮城県県気仙沼市出身のEPO、同県栗原市出身のかの香織、石巻市出身の月嶋カリンも参加。ラジオやインターネットでも中継され、それぞれが「少しでも私たちの歌で元気と明るさを取り戻してくれればいい」と話した。
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