[ 2010年7月3日 06:00 ]

サロネンの緻密な棒に応えて鮮烈な印象が残る演奏を披露したフィルハーモニア管弦楽団

 ベートーヴェンの交響曲第9番は彼の熱心な信奉者であり研究者でもあったワーグナーが校訂・補筆を行いドレスデンで演奏(1864年)し成功を収めて以降、演奏会のプログラムに載る機会が増えたといいます。今日、不滅の金字塔たる傑作として揺るぎない評価が確立されている第9交響曲ですが、ワーグナーが作品の真価を理解し、それを詳らかにしていなかったならば、この曲の位置付けは、また違ったものになっていたのかもしれません。

 サロネンのタクトによる幻想交響曲にも、第9交響曲の先例と同様なことが当てはまるような気がしてなりません。サロネンはもしかするとベルリオーズ自身よりも、さらに曲の奥深い部分にまで洞察の眼差しを向けていたのではないか、との思いが生じてしまうほどの説得力に富んだ演奏。音が形をもって浮き上がってくるようなその音楽は、幻想交響曲の知られざる魅力を余すところなく聴衆に伝えてくれるものでした。

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2010年7月3日のニュース