映画館前で抗議も 「ザ・コーヴ」厳戒の中初公開

[ 2010年7月3日 11:46 ]

報道陣が詰め掛ける中、「ザ・コーヴ」が上映される横浜市の映画館に入る人

 和歌山県太地町のイルカ漁を批判的に取り上げ、抗議や街宣活動の影響で一時、公開が危ぶまれた米映画「ザ・コーヴ」の上映が3日、青森・八戸、仙台、東京、横浜、大阪、京都の6映画館で始まった。今後、ほかに18館でも上映予定。各地で警察官などが警戒に当たったが、大きな混乱はなかった。

 「横浜ニューテアトル」で鑑賞した茨城県つくば市の大学院生の男性(24)は「海がイルカの血で真っ赤に染まる場面がすごく残酷で、知らなかったことが描かれていたのは良かった。イルカ漁を知って、賛否を考えるきっかけにはなるのでは」と一定の評価をした上で、「制作者に都合のいい情報ばかりが盛り込まれているように感じた。漁民の意見があまり取り上げられていない点はおかしい」と批判も。

 東京都渋谷区の映画館前では一時、上映に反対するグループが「漁師さんをいじめるな」などと書かれたプラカードや横断幕を掲げてシュプレヒコールを上げ、抗議活動。警察官がグループを取り囲んで警戒した。この映画館では初回の上映で、警備用に充てた席も含め108席が満席になったという。

 当初は6月26日から全国で順次公開予定だったが、映画を「反日的」とする保守系団体からの抗議予告で、東京、大阪の計3館が相次いで中止に。日弁連などが緊急声明を出す事態となった。

 配給会社アンプラグド(東京)によると、この日公開の6館中、これまでに4館が抗議活動を受け、うち東京と横浜の2館は街宣行為の禁止を求める仮処分が裁判所で認められた。

 伝統的なイルカ漁を隠し撮りしたドキュメンタリーで、地元は「間違った情報で批判している」などと強く反発。公開に当たっては、町関係者の顔にぼかしを入れ、データや表現に誤解のないようテロップで補足した。

 映画の上映中止は2008年、中国人監督のドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」でも問題となった。

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2010年7月3日のニュース