【高校野球】「ミスター」長嶋さん寄贈バットで感謝の全力プレー 石川大会開幕戦

[ 2025年7月12日 06:00 ]

第107回全国高校野球選手権石川大会1回戦   羽咋4―0野々市明倫 ( 2025年7月11日    石川県立野球場 )

<羽咋・野々市明倫>5回1死一、三塁、長嶋さん提供のバットでスクイズを決める羽咋・山本(撮影・河合 洋介)
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 第107回全国高校野球選手権大会(8月5日開幕、甲子園)の地方大会が11日、各地で行われた。石川大会の開幕試合は、羽咋(はくい)が野々市明倫を4―0で制した。6月に死去した巨人の終身名誉監督・長嶋茂雄さんは昨年6月に石川県の高校に金属バット3本を寄贈。そのバットを開幕日に登場した両校が使用し、適時打やスクイズが生まれた。ミスターの魂は、北陸の高校球児へと確かに受け継がれていた。

 能登半島地震発生から半年が経過した昨年6月、長嶋茂雄さんから石川県高野連に加盟する全50校に金属バット3本が寄贈された。贈呈式には次女の三奈さんが出席し、父から預かった手紙を代読した。その冒頭に「思いがけないことで絆が出来た球児の皆さんにメッセージを届けることになりました」とあった。バットを寄贈することを「絆が出来た」と表現したのだ。そして、ミスターが天国に旅立っても、石川の球児との絆は途切れなかった。

 開幕試合に出場した羽咋では、いまも2人の選手が寄贈されたバットを使用している。試合前、宮崎宏正監督は、2人をこう励ました。「おまえらには長嶋さんの魂が乗り移っているから大丈夫だ」

 その一人、「6番・三塁」の絈野真暉(かせの・まさき=2年)は、特別なバットを持つ手に力が入った。「長嶋さんのバットを使う以上、絶対に一本は打たないといけない」。そして1―0の4回1死二塁で低めカーブに体勢を崩されながら食らいつき、右前に落とす適時打を決めた。

 「4番・中堅」の山本昌平(3年)は、このバットを使い始めた昨秋から4番を任された。「いろんなものを試したけど、長嶋さんのバットが僕に一番いい打球を打たせてくれる」。夏初戦は無安打に終わった。それでも3―0の5回1死一、三塁で「4番のプライドは捨てる」とスクイズを投前に転がし、貴重な追加点を奪った。

 羽咋市にある同校は、防球ネットが切れ、体育館の一部が崩れるなど、今も震災の爪痕が残っている。その復興の途上にあった昨年6月にバットが届いた。宮崎監督は「長嶋さんは、野球の神様だぞ。本当に大事に使わないといけないぞ」と伝えて選手に手渡した。同監督は、長嶋さんからの手紙を額縁に入れて自室に飾っている。

 「長嶋さんが石川のことを思ってくださった。1年たってバットの反発力も落ちているだろうけど、何かが乗り移っていたのかな」

 長嶋さんは生前、本紙の取材に「高校野球こそ日本の野球の基本ですから」と答えていた。そして石川の球児が、長嶋さんのようにフルスイングをし、全力疾走をした。ミスターの魂は、高校野球でも永久に不滅です――。 (河合 洋介)

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