審判員にとっても「痛い」選手交代伝え忘れ 規則上認められる? なぜ厳重注意処分なのか

[ 2022年9月23日 14:18 ]

セ・リーグ   中日3―0ヤクルト ( 2022年9月22日    神宮 )

<ヤ・中>9回、立浪監督(右)は柳田主審の確認を受ける(撮影・村上 大輔)
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 中日・立浪監督が選手交代を伝え忘れ、球審の柳田審判員から注意を受けるシーンがあった。9回裏に左翼・大島に代えて加藤翔が出場したが、スコアボードは大島のまま。1死を取ったところで、ヤクルトベンチから指摘があり、ベンチ前に呼び出されて注意を受け、場内放送、スコアボードの変更があった後に試合が再開された。17日のヤクルト戦でも選手交代の通告を怠ったとしてNPBから厳重注意を受けていた指揮官は「きょうは完全に自分の伝え忘れ。反省します」と話した。

 あってはならない「交代通告がなかった選手」の出場。めったにない事象で「その間に起こったプレーは有効なのか?」や「なぜ厳重注意を受けたのか?」などの疑問が湧くだろう。11年から16年までNPB審判員を務めた私が、規則適用についてまとめたい。

 まずは「交代通告がなかった選手」の取り扱いについて。公認野球規則5.10(j)には【代わって出場したプレーヤーは、たとえその発表がなくても、次のときから、試合に出場したものとみなされる】とあり、今回のケースでは(3)【野手ならば、退いた野手の普通の守備位置についてプレイが始まったとき】が適用される。つまり監督の交代通告がなくても出場が認められ、行われたプレイも正規のプレイとして扱われる。

 ならば問題ない、というわけではない。公認野球規則5.10(b)には【監督は、プレーヤーの交代があった場合には、ただちにその旨を球審に通告し、あわせて打撃順のどこに入るかを明示しなければならない】と定められており、監督としての義務を果たさなかったため、立浪監督は厳重注意処分を受けることになった。

 監督による「交代通告の伝え忘れ」は審判員にとっても「痛い」。私はNPB審判員時代に2軍戦のウエスタンリーグ・オリックス―広島戦で体験した。一塁塁審を担当していた私は、広島の守備時に一塁手、右翼手が入れ替わっていたことに気づかなかった。広島の2軍監督から交代通告はなくプレーが進んだ。イニングの途中で球審を担当していた先輩が気づき、監督に確認した上で交代を場内放送させた。

 監督のみならず、守備につくプレーヤーを確認していなかった審判員のミスにもなる。一塁手と右翼手の最も近くにいた一塁塁審の私も含めて当該試合を担当した審判員全員が「厳重注意」を受けた。

 当時の新聞に載った「厳重注意処分」の小さい記事を読んで失態の重大性を認識した。それ以来、監督による交代通告がなくても、9人のプレーヤーが勝手に交代していないか、一人、一人、入念に確認するようになった。

 記者になった現在、原稿に誤字、脱字がないか確認するよう、口を酸っぱくして注意されている。もう一度「初心」を思い出して確認作業にあたろうと思う。(柳内 遼平)

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2022年9月23日のニュース