【虎番リポート】12球団トップの観客数を支える「ファン参加型」演出 勝っても負けても楽しめるぞ

[ 2022年5月31日 05:30 ]

昨季からの名物企画「ムチャぶりアクション王決定戦」(球団提供)
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 阪神の主催試合は、負けていてもファンを飽きさせない。そう思わせる仕掛けがある。

 試合前、応援バットを打ち鳴らして大きい音を出すイベントで幕を開ける。プレーボール直前には、観客の代表がマイクを握ってチームにエールを送る。5回終了時の「ムチャぶりアクション―」は、昨季からの名物企画。「高速で阿波おどり」、「荒れ狂うドラマー」といったお題に、観客が応える。こん身のパフォーマンスは大型ビジョンに映され、クスッとさせられる。

 どれこれも、来場者を巻き込んだ「ファン参加型」で、球団の営業部・西村翔太さん(31、写真)は「お客さんの一番の喜びは勝利。その実現には球場の一体感、すなわち楽しい空間が必要で、来場者の思い出に残るような体験をしてもらおうと考えた」と狙いを語った。

 近年、球団は甲子園球場周辺のボールパーク化を進めた。その一環で、試合の演出改革に昨年から着手。30代前後の若手が中心になって企画立案。テーマパーク勤務から19年に転職した西村さんは、プロジェクトのクリーンアップ的存在だ。

 100も200も出た案を絞って実現し、改めて、笑いを大切にする“関西人”の偉大さを実感したそうだ。

 「来場者が、面白さをアピールして盛り上げてくれて、助かっています」

 米国もファン参加型のイベントを大切にしているように思う。私は2010年代前半のゴルフ担当時代、米国出張の合間に米大リーグをよく観戦した。ツインズ傘下3Aロチェスターの試合は観客が滑稽な“かぶり物”をして競争したり、1試合でさまざまな催しがあった。たいてい客席は大盛り上がり。観客が試合の登場人物になることでゲームに親近感が湧き、イニング間を含めて楽しい時間を過ごした記憶がある。

 今季の阪神は最下位ながら、12球団トップの1試合平均3万5959人(30日時点)を集める。この数字は、「勝っても負けても楽しんでもらえるように」という西村さんたちの思いが、少なからず届いている結果ではないだろうか。(倉世古 洋平) 

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2022年5月31日のニュース