ベーブ・ルースのように大谷も…将来の「大リーグ歴代トップ100プレーヤーランキング」が楽しみ

[ 2022年2月26日 07:45 ]

大谷翔平
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 今月上旬、スポーツ専門局ESPN(電子版)が大リーグの歴代トップ100プレーヤーを選出したランキングが話題を呼んだ。日本選手ではイチロー(元マリナーズ)が46位。現役ではエンゼルスのトラウトが15位に堂々のランクイン。1位は、やはりというべきか、ベーブ・ルース(元ヤンキース)だった。

 投打の両方で特筆すべき実績を残したのだから当然。と思いきや、選考理由を読んでみると、投手としての実績の記述は「ワールドシリーズでの3度の先発機会では全て勝ち、うちの1戦は延長14回だった」という1行だけ。それ以外は全てホームランバッターとして野球を変えたことに関する説明だった。

 エンゼルスの大谷という新たな怪物に比較されることで、近年のルースは投打二刀流という部分を特筆されることが増えた印象がある。実際に打者として714本塁打に加え、投手としても通算94勝というのは素晴らしい成績だ。ただ、米国でルースがこれほど高く評価され、愛されているのは、おそらく「二刀流」として成功したからではない。何と言っても豪快な本塁打を量産し、時代を変えたがゆえなのだろう。

 昨秋の大谷が大活躍を続けていた頃、2018年にルースの伝記「The Big Fella:Babe Ruth and the World He Created」を上梓した作家ジェーン・リービー氏にじっくりと話を聞いたことがあった。そこでリービー氏がルースに関して特筆したのも、やはりホームランバッターとして野球そのものを変化させたことだった。

 「ルースが出現する前まで、野球はジョン・マグロー(ニューヨーク・ジャイアンツ)のような細かい動きを好む監督にコントロールされたスポーツでした。ルースはそんな野球が我慢できなかった。彼が現れるまで、本塁打はランニングホームランが中心。オーバーフェンスするものではありませんでした。ルースはその大きな手で野球を変え、革命を起こしたと言っても大げさではありません。ルースは当時から、現在大谷がしているのと同じ種類のゲームをプレーしていたのです」

 実際にルースのキャリア初期はいわゆる「デッド(飛ばない)ボール」時代であり、1916~18年に12本以上の本塁打を打った選手はいなかった。そんな折に登場したルースは、1919年に一人で29本打ってデッドボール時代を終焉(しゅうえん)させる。

 以降、ルー・ゲーリッグ(元ヤンキース)、ジミー・フォックス(元アスレチックス)といった長距離砲がルースの後を続くようになった。結果として、1918年にはメジャー全体の本塁打数が235本だったのが、1927年には922本まで跳ね上がる。こんな経緯を振り返れば、「ルースは野球を変え、革命を起こした」という意味が見えてくるはずだ。

 昨秋、大谷が40本塁打&10勝に近づいた頃、10本塁打以上&10勝以上を最後に達成したルースと比較する声がこれまで以上に増えていった。ただ、現代に生きる私たちは、本来であればシンプルに数字だけで2人を比べるべきではないのだろう。それぞれの数字の意味、価値は時代背景によって変わってくるからだ。

 それよりも、大谷がルースに比肩し得るのは、自身のやり方で野球に革命を起こしつつあるから。ルースが本塁打で野球を変えたのとは別の形で、大谷も変化を生み出すことはできるかもしれない。リービー氏もこんなふうに述べていた。

 「ルースが野球を変えたのと同じように、大谷も二刀流を続け、未来に新しい形を提示することを願っています」

 今後、大谷の影響で、大リーグでは不可能と目されてきた二刀流が続々と生まれるようなことがあれば、それはもう「革命」と呼んでも大げさではない。

 分業性が確立されてきた野球界において途方もない話に思えるが、昨季の大谷の活躍と、その後の盛り上がりを見る限り、あり得ない話とも思えない。もしも、ここで大谷が野球の歴史を変えたら?少し気は早いが、30年後、50年後の歴代トップ100プレーヤーランキングでは、大谷がルースに近い位置まで浮上している可能性も十分にあるのかもしれない。(杉浦大介通信員)

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2022年2月26日のニュース