「平成の鉄五郎」が記事に 水島新司さん、本当にありがとうございました

[ 2022年1月21日 07:30 ]

漫画家・水島新司さん(中央奥)、渡辺久信監督(同右)が見守る中、キャッチボールを行う西武・工藤公康投手(10年2月撮影)
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 その姿を見た瞬間に見出しが思い浮かんだ。ズバリ「平成の鉄五郎」。生前、一度だけ漫画家の水島新司さんを取材したことがある。2010年、宮崎・南郷での西武キャンプ。見学に訪れた水島さんは、ブルペンで大ベテランの左腕に熱視線を送っていた。

 投げていたのは当時46歳で前ソフトバンク監督の工藤公康。記者はひらめいた。水島新司→工藤公康→岩田鉄五郎…。これは記事になる。にょほほほほ~が決めゼリフの岩田鉄五郎は水島漫画の名物キャラクター。73歳まで現役を続けた左腕で「球聖」と呼ばれた。

 さっそく直撃取材。「見ているだけで感動した」。感無量の表情だった水島さんは「(工藤の46歳は)漫画でいえば70歳代のようなもの。引退前に描きたいねえ」。丁寧に答えていただき無事、記事になった。その節は本当にありがとうございました。

 記者はまさにドカベン世代。リアルタイムで愛読していて胸躍らせたのは、その続編でもある「大甲子園」だ。明訓高校の山田、里中、岩鬼、殿馬らが、水島さんの他の野球漫画のキャラクターと対戦する。「球道くん」の青田高校・中西球道、「一球さん」の巨人学園・真田一球、「ダントツ」の光高校…。水島さんはかねて構想を温め、全ての漫画は3年春の時点で連載を終了していたという。そして3年夏の熱戦の数々。「大甲子園」には岩田鉄五郎はもちろん、「野球狂の詩」の女性投手・水原勇気も登場する。

 2022年。球春到来を前に水島さんは82歳で亡くなった。今年ももうすぐ春季キャンプ。取材に訪れる宮崎、沖縄で、今年はどんな出会いが待っているだろうか。コロナ禍。無事にキャンプを、そしてシーズンを過ごせることを切に願いたい。(記者コラム・鈴木 勝巳)

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