屋外フリー打撃“封印”「大谷式」ルーティン 屋内では一年中同じメニュー繰り返し

[ 2021年12月17日 05:30 ]

19年4月、打撃練習する大谷(エンゼルス提供)
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 【SHOHEI 2021 IMPACT(下)】投げては9勝、打っては最終盤まで本塁打王争いを繰り広げ、両リーグ3位の46本のアーチを放ったエンゼルス・大谷翔平投手(27)。今季の大きな変化の一つが、試合前に屋外でのフリー打撃を行わないことだった。二刀流での肉体的負担を軽減するのもメリットだが、それだけではない。その証拠に、他球団の強打者も導入を始めている。「大谷式」ルーティンが主流になる日が来る?(大リーグ取材班)

 大谷は昨季までと比べ、試合前にグラウンドで練習することが極端に減った。登板間のキャッチボールと、ブルペン投球を行う日だけ、報道陣の前に姿を現す。それ以外は開幕戦を除き、屋内のケージでの打撃練習に専念してきた。打者として外から見える準備は、試合直前に外野で数本ダッシュを繰り返すだけ。打って、走って規格外のハイパフォーマンスは驚き以外の何物でもなかった。

 肉体的に重い負担を強いられる二刀流だけに、これにより疲労が減ることが重要なのは間違いない。ただ、よりプラス要素が大きいのは、屋内の方が効率的にスイングをチェックできることだ。

 (1)見える化 エンゼルスのジェレミー・リード打撃コーチは「2、3種類のドリル(メニュー)を屋内の打撃ケージの中で一年中やっている。時間は15分程度」と明かす。屋内ケージでは変化球や相手先発の左右を想定したマシン打撃ができる。また、複数のビデオで撮影して打球の速度、飛距離、角度などのデータが「見える化」されており、リアルタイムで確認できる。

 今季両リーグトップのチーム打率・267をマークしたアストロズでは主力のコレア(現在FA)、タッカーらが屋外でフリー打撃をしない。自己最多の26本塁打を放ったコレアは「屋内ケージで打った方が、しっかりとスイングをチェックできる」と証言した。

 (2)雑念を排除 また、大谷は屋外で打たない理由について「外で打つともっと飛ばしたいとなり、余分な動きが出てくる」と話したことがある。実は、エ軍のジョー・マドン監督も「本塁打競争になってしまう」と、以前からあまり好んでいないという。コレアは「グラウンドで打つとどうしてもスイングが大きくなり、本塁打を狙ってしまう。早く球場に来ているファンのためにショーを見せようと意識してしまうから」と説明した。

 もちろん、屋外での打撃練習には、打球がどんな軌道で飛ぶかイメージを膨らませることができる利点がある。カブス時代にマドン監督に師事し、今季32本塁打をマークしたシュワバー(レッドソックスからFA)は屋外派。しかし、「屋内でスイングのチェックだけをした方が効率的、という考えは理解できる」と話した。今季まで4年間レッドソックスで打撃コーチを務め、来季はレンジャーズで同職を担うティム・ハイヤーズ氏は「どちらがいいかは状況次第」とした上で「基本的にはグラウンドに出て、実際に打席に立ってどのように打球が飛ぶか見て感じた方がいい」と見解を示した。

 大谷と本塁打王を争ったブルージェイズのゲレロやロイヤルズのペレス、15年ナ・リーグMVPのフィリーズのハーパーも、あまり屋外で打撃練習を行わなくなった。試合前練習も楽しみに球場を訪れるファンにとっては少し寂しいかもしれないが、大谷フィーバーを機に、このルーティンがさらに広まる可能性は十分ある。=終わり=

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