一流選手は番記者を育ててくれる スーパースターだった松坂大輔に教えられたこと

[ 2021年7月11日 09:00 ]

西武・松坂
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 「いい選手は番記者を育ててくれる」。駆け出しの頃、先輩が言っていた言葉だ。記者は2006年に西武担当。メジャーに移籍する前年でエースとして君臨していたのが、今月7日に今季限りでの引退を発表した松坂大輔投手(40)だった。当時はまだ20代でキャリアが浅かった記者は、彼を近くで取材することで成長させてもらった。

 高校時代から全国の注目を集めてきた右腕。その一挙一動、ささいなコメントもメディアに取り上げられたことで自身が発する言葉の影響力を自覚していた。同年は、早い段階からオフのメジャー移籍も噂されていただけに、シーズンが佳境になるにつれて言葉の数も少なくなっていったように思う。だが、誰もが注目するスーパースターで投げるたびに大きく取り上げなければならない。「コメントを引き出すためには、どうすればいいか…」。常に頭を悩ませていたが、振り返ってみればいい経験だった。

 強く印象に残る出来事がある。当時、駒大苫小牧で高校野球界を席巻していたのが現楽天の田中将。同じ右投げの豪腕タイプで活躍するたびに会社から「松坂のコメントを取ってくれ」と指令を受けた。ある日の練習後、ベンチ裏に戻る松坂にコメントを求めると返事は「後でもいいですか?」。台風か何かで締め切りが早い日だったため「一言、二言、簡単なコメントでいいんだけど…」と返すと、ムッとした表情で、こう言われた。「僕が言うコメントは本人も新聞で見る可能性がある。だからしっかりと答えたいです」。何も言えず、その場で謝罪した。

 たとえ短いコメントを求められても、軽々しく発言はしない。松坂が持つ発信者としての責任感に触れ、取材者としても責任を持つことを心に誓った。松坂大輔という選手に出会い、取材できたことは記者の誇りだ。(記者コラム・山田 忠範)

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