楽天・マー君も重視する捕手の技術フレーミングって何?プロウトのrani氏が重要性解説
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打者なら打球速度や角度、投手では回転速度や回転軸…。野球の能力を測り、向上させるための新たな数値的指標が続々と生まれている近年、捕手の技術で注目されているのが「フレーミング」だ。数年前からこの指標を研究し、日本のプロ・アマ選手に助言を行う「プロウト(プロの素人)」のrani氏(本名、年齢非公表)に、その重要性を聞いた。
日本でその言葉が広く知れ渡ったのは、今年2月だろう。ヤンキースから8年ぶりに楽天に復帰した田中将が春季キャンプで、捕手に「ミットの音とか気にしなくていい」と、代わりにフレーミングの重要性を訴えた。
rani氏は、00年代からデータが出始めたという大リーグを例に説明する。
「19年で言えば、フレーミング得点(巧拙により与えた得点)で30球団トップの選手と最下位の選手では、40・4点の差が生まれた。ワンプレーの影響は大きくないが、積み重ねの結果、年間トータルで大きな差を生む」
同じ捕手でもブロッキング(ワンバウンドを止めるなどの技術)は14・3点、スローイング(盗塁刺など)は8・0点がトップと最下位の差。行われる回数がフレーミングの方が圧倒的に多く、それだけ重要なのだ。
フレーミングとは、どういう技術なのか。rani氏が指摘するのは、判定をねじ曲げることを目指すものではない、という点だ。
「基本理念は“全ての”ストライクをストライクと(審判に)言ってもらえるように捕球すること。例えば、低めのボールに対し球威に負けてミットが落ちると審判から非常に見えづらくなり、ストライクでもボール判定されることがよくあります。ゾーンに来た球は“ストライクに来ましたよ”と、審判が見やすいように捕球する意識が重要です」
しかし、現代野球において、これは並大抵のことではない。
「今や主流の高速で落ちるスプリットやカットボールに対し、ただミットを置いておくだけで球威を殺すことなど絶対できない。球威に負けないためには勢いをつけて捕るのを前提に、高い技術が要求されます」
ミットを動かす行為を嫌う意見もあるが、“球威に負けてミットが落ちてもストライク判定します”などと誰も保証してくれない。ゾーン(周辺)に来た球に対しては、とにかく全力を尽くす。これがrani氏が言うフレーミングの考え方だ。
では、ファンが技術を見分けるポイントはどこなのか。rani氏は「フレーミングの成立条件」として以下の4点を挙げた。
(1)Single Motion(1つの動きで)
「一度ミットが下がってから上げるなど、2つの動きになると駄目」
(2)On Time(同時に)
「捕球後にミットを動かしても意味がなく、動かしながら勢いをつけて捕るのが大事」
(3)Quick Movement(高速で)
「遅いと球威に負ける。腕だけで無理やり動かしてもスピードは出ない」
(4)To The Zone(ゾーン内へ)
「ゾーンの外にミットが流れないように逆向きの力を与える」
現在の日本球界でフレーミングに優れている捕手に挙げるのは、中日・木下拓、阪神・坂本ら(別表参照)。投手と打者の「いかに投げ、いかに打つか」の勝負に加え、捕手の「いかに捕るか」に着目するのも興味深い。
《データ12球団1位 木下拓15点防いだ》データ専門会社DELTAは、昨季のプロ野球でフレーミング技術により防いだ得点やストライク数を、参考値として算出。両リーグトップには、rani氏も高く評価する中日・木下拓がランクされた。ストライクを約106個増やし、約15得点を防いだ。
《アマのハンパない逸材 京都国際の中川勇斗》アマ球界にもフレーミングにたけた逸材はいる。今春センバツでrani氏の目に留まったのが京都国際の中川勇斗捕手(3年)だ。木下拓タイプだといい「半端じゃない。フレーミングに必要な要素をほとんどできている。そんな選手、アマチュアで見たことない」と絶賛した。
《捕手論でダルと対談》rani氏は、オンラインサロン(会員制ウェブサービス)の「NEOREBASE」でプロ・アマを問わず、アドバイスを送っている。同サロンで主に投手を担当しているのが、パドレスのダルビッシュ、ソフトバンクの千賀らにも助言することでも知られる「プロウト」の第一人者・お股ニキ氏。rani氏もダルビッシュと「捕手論」について対談したことがある。15年ごろからSNSで発信を始め、今では大リーグ球団のコーチとも意見交換を重ねてメジャーの最新理論を吸収している。
【取材後記 昔から日米で存在したフレーミング 数値で可視化され注目】rani氏は、定義や解釈について、広く認識が統一されていないフレーミングについて、2点を補足した。
まず、この技術自体は、日米ともに昔から存在したものであること。「今になって注目されている理由は、その重要性と方法論が数値によって明らかにされたためです」と説明した。大リーグならアストロズなどで活躍し、タイガースやエンゼルスで監督も務めたブラッド・オースマス氏、日本なら元ヤクルト監督の古田敦也氏が代表例だという。
もう一つは、「捕手はフレーミングだけできればいいわけでありません」と強調。「フレーミングとブロッキングの両立」が現代捕手の最重要課題であると訴えた。もちろん、打撃やスローイングも含め、総合力を高めた捕手が最も評価されるのは、時代を経ても変わらない。
新たな指標やデータを使って、いかにチームの勝利につなげるか。そして、いかに観戦の楽しみを増やすか。そのヒントをくれる「プロウト」の見識を、正しく理解して伝えていきたい。(野球担当デスク・大林 幹雄)
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