マー君、楽天復帰を決断――ヤンキースの先輩・黒田と重なる男の矜持 全力注ぐため求めた場所

[ 2021年1月29日 06:15 ]

田中将大 楽天復帰

ヤンキースで同僚だった黒田(右)と田中。2人の投手としての矜持が重なる
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 田中が楽天復帰を決断した背景には、何があったのか。ヤンキース在籍時の大半を取材した後藤茂樹記者(43)が、舞台裏に迫った。

 電撃復帰は、新型コロナウイルスの影響がなければありえなかっただろう。コロナ禍が避けられない21年、どのマウンドが一番自分のパフォーマンスを発揮できる舞台なのか…。田中がその一点に絞り、あらゆる選択肢の中で考え抜いたことは想像に難くない。

 メジャー通算174試合に登板。その中に1試合だけ、中継ぎ登板がある。19年9月29日のレンジャーズ戦。チームは既に地区優勝を決めていた。オープナーに続く2番手登板のテストであり、間近に迫ったプレーオフへの調整目的もあった。そんな登板の前に、こう語気を強めた。

 「プレーオフを見据えた投球とかはない。目の前の試合で全力を、ベストを出し切るだけ」。プロ選手である以上、ただ目の前の試合だけに集中し、全てを尽くす。先を見ることはなく、毎試合そのことの繰り返しで駆け抜けてきた。それこそが投手・田中の矜持(きょうじ)だった。

 まだメジャーでやれるのに――。誰もがそう思う中で古巣へ、という流れは多くのファンにヤ軍の先輩・黒田博樹を想起させるかもしれない。だが32歳という年齢で、コロナの影響も受けた今回の復帰は、厳密には先輩とは異なる道筋だろう。ただ、2人の投手としての矜持は重なる。41歳まで現役を続けた黒田だが「この試合で終わってもいい」という思いで常に目の前の1試合、1球に全力を懸けてきた。根底に流れる思いは同じだ。

 人一倍家族の時間を大切にする田中の単身赴任は考えられない。家族と共有する時間。そして高いモチベーションを注ぐことができるユニホームを着ることは、目の前の試合、1球に全力を注ぐための、かけがえのないものだった。今の田中将大にとって、仙台のマウンドこそが最も輝ける場所と映ったに違いない。(元ヤンキース担当・後藤 茂樹)

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2021年1月29日のニュース