楽天・岡田新コーチが実現するか、内野6人外野1人の夢シフト

[ 2020年11月13日 13:00 ]

岡田幸文氏
Photo By スポニチ

 【君島圭介のスポーツと人間】楽天が発表した来季の新体制を見て、思わず頬が緩んだ。石井一久GMの監督兼任より、個人的には元ロッテ・岡田幸文氏の1軍外野守備走塁コーチ就任がサプライズだった。

 「外野を1人で守ることは可能かな?」

 現役時代の岡田氏にこんな質問をした。打球方向やスピードのデータを募って傾向を分析し、日々新たな守備シフトが生まれる現代野球においても、内野5人で外野2人を採用したチームはあっても1人はない。荒唐無稽な質問だったが、岡田氏はしばらく考え込むと、真顔で「アウトカウントは?」と聞き返してきた。

 無理だ、とか、余裕じゃん、と軽口が返ってくると思ったが意外な反応だ。シーズン359守備機会連続無失策のプロ野球記録を作った男は言った。「フライなら両ファウルライン際まで追いかけて捕れる。でも体勢は崩れるから返球は無理ですよ。ランナーが三塁にいたら還してしまう」。空想が現実の話に変わってきた。

 「2アウトで、そのときの投手がフォークボールを持っていたら1人でも守れる」

 岡田氏は遠くを見る目でそう言うと、「面白いかも」と続けた。

 現役時代の状況判断力、反応スピード、脚力、捕球技術を知る人間ならば、外野を1人で守る選手を選ぶなら岡田氏の名前を挙げるだろう。

 楽天には胸を躍らせるほどの可能性を秘めた若い外野手が3人いる。田中和基、辰己涼介、そしてオコエ瑠偉だ。すでに田中和、辰己は記憶に残るスーパーキャッチを何度も見せてくれた。岡田氏の後継候補の最上位に入る。オコエも身体能力とセンスは2人に肩を並べる。

 名選手が名コーチとは限らない。「なんで俺のように出来ない!」と頭ごなしに潰されていった選手も多い。全豪オープンの女子ダブルスでベスト4になったこともあるテニスの加藤未唯をジュニア時代に指導したコーチの言葉が大好きだ。

 「僕は何もしていない。何か正しいことをしたとしたら、それは彼女の成長を邪魔しなかったということ」

 岡田氏の性格ならきっと同じタイプの指導者になるだろう。その指導で後継者が育ったとき、9回2死三塁のピンチを迎えたら、ベンチで石井監督にこう進言して欲しい。「あの打者は野手の間を抜く打球が多い。外野1人で守らせて、内野を厚くしましょう」。胸躍るではないか。(専門委員)

続きを表示

2020年11月13日のニュース