新井貴浩氏 能見の球が「まだまだやれる」と言っていた 完全燃焼を応援したい

[ 2020年11月3日 06:15 ]

阪神・能見                                                            
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 【新井さんが行く!】今年も誰かがユニホームを脱ぐ…という話題をあちこちで目にする季節になった。一緒にやった選手も多い。寂しく思っていたところ、先日の横浜で能見の投球を目の当たりにした。体が元気だし、球も元気いっぱい。阪神退団が決まっても現役続行の意志は強い。まだまだやれる、とマウンドで訴えるような直球押しに胸のすく思いだった。

 阪神ではチームメート。キャンプのブルペンでは誰よりも投げ込んでいたし、本当によく練習する。だから、体も元気なんだと思う。外から見ていても、まだまだやれると感じる。何より黙々とチームのために投げることができる投手だ。今年も僅差だけでなく、ビハインド、大ビハインドの状況でも不満げな様子は一切見せず、懸命に腕を振っていた。

 実績のあるベテランにありがちな、独りよがりなところは全くない。投手として引き出しも多い。同じ直球でもタイミングや間合いを変えたり、技術が高い。新しいチームが決まれば、戦力としてはもちろん、きっと若手の手本になるはずだ。

 阪神から広島へ戻った15年。復帰後最初の本塁打を打った相手が能見だった。不思議と相性(打率・382、6本塁打、19打点)が良くて、周りからもよく言われた。でも、実は全盛期の能見とはチームメートで対戦がなかったから。広島へ戻って最初の頃は直球勝負がほとんど。打つたびに「勘弁してくださいよ」とか「次は打たせないですよ」と連絡が来た。そのうち直球が来なくなって、外角へ沈むツーシームばかり。苦手なところをきっちり投げてきた。そんな駆け引きも楽しかった。

 能見は今年41歳。選手寿命が延びた一方、高校生のレベルが上がって一昔前のように3~4年は体づくりという時代ではなくなった。早い時期から起用できても枠は限られ、しわ寄せがベテランに来るのかもしれない。でも、“体が限界”とか“やり切った”いうのではなく、“まだやりたい”という気持ちがあるなら、やれる限りやってほしい。決められるのは本人だけ。能見の完全燃焼を応援したい。

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