新井貴浩氏が最下位・広島に緊急提言 苦境で奮闘する会沢の姿勢こそ「道しるべ」

[ 2020年9月8日 06:30 ]

<広島>6日のDeNA戦でケムナ(左)に声をかける会沢
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 再び最下位に沈んだ広島に、いま何が必要なのか。16年からのリーグ3連覇に貢献した本紙評論家の新井貴浩氏(43)は苦境の中でも懸命に奮闘する会沢翼捕手(32)の姿勢を「道しるべ」として示した。チーム内の新しい息吹に期待しつつ、同時に主力組の健在も強く望んだ。

 6日のDeNA戦。会沢は四球連発の投手陣に対して言葉やジェスチャーを送って懸命にもり立てようとしていた。どんなにボール球が続いても、投げやりにならず一球一球を大切にミットで受け止めていた。

 実績のある捕手なら、不満が態度に出てもおかしくないところ。いら立ちや憤りを押し殺し、何とか投手のいいところを引き出そうとしていた。あの姿勢を、他の選手も見てほしい。いま何をやるべきか、何が必要なのか。会沢を見たら、分かってくれると思う。

 いいときは何をやっても称賛される。苦しいとき、つらいときこそ、その人が何を大切にしているのか、本質が見える。真価が問われる。投手陣が振るわず、会沢も捕手として責任を感じていると思う。自分の体調も決して万全ではなく、個人としても、チームとしても結果が出ていない。そういう苦境で会沢の姿は立派だった。

 ほとんどの選手にとって初めて経験する低迷で、少し混乱しているかもしれない。どうしていいか分からず、迷いがあるのかもしれないが、近くに会沢という「道しるべ」がある。

 プロだから結果を問われるのは当然だし、仕方ない。同時にどういう気持ちでグラウンドに立ち、プレーするのかというプロセスも大切だと思う。それらは見ているファンの人たちにも伝わる。

 故障や不調の選手が多く、就任1年目の佐々岡監督にとっては大変なシーズンだと思う。かつて山本浩二さんが「耕し」、マーティー・ブラウンが「種をまき」、野村謙二郎さんが「育て」、16年からのリーグ3連覇につながった。再び「耕す」サイクルに来たと感じている人は多いかもしれない。

 でも、まだ違う。

 まだまだ花を咲かせ続けないといけない選手がチームには多い。現役時代、移籍したのは30歳のときだ。本来なら、これから全盛期を迎える選手が何人もいる。まだまだ枯れてもらっては困る。

 カープは外からの補強で強くなるチームではない。人を育て、みんなで力を合わせることで強くなる。花が咲いているうちに、その近くで種をまき、新しい芽を育ててほしい。「耕すこと」に戻ると、また長い空白が生まれてしまう。花を咲かせつつ、新しい芽を育てる。いまは好機とも言える。(スポニチ本紙評論家)

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