「21世紀」の野球少年へ――選抜21世紀枠にみる危機感と期待感
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【内田雅也の広角追球】小学校卒業文集のテーマは『21世紀のぼくたち』だった。1975(昭和50)年3月のことだ。担任のイケガミ先生は「西暦2000年、自分が何をしているかを書きましょう」と言った。当時、21世紀は2000年に始まる、というのが定説だった。実際は2001年からなのだが、この問題はさておく。とにかく、11~12歳の子どもが37~38歳の遠い未来を思い描いて書いた。
読み返してみた。真冬でも半ズボンで通していたカナオカ君は<人類が滅亡へところがり落ちていく世紀かもしれないし、宇宙へとやく進する世紀かもしれない>と書いている。
石油ショックや光化学スモッグに見舞われ、1999年7月に人類が滅亡するというノストラダムスの大予言がはやり、小説『日本沈没』がベストセラーとなり、映画は全館満員となった。
そんな暗い未来の一方で、明るく前向きな作文ももちろんある。5年生のころ、町中から山と田んぼに囲まれたわが校に転校してきたキシさんは英語を学んで世界にも目を向け<仕事と家庭ははっきり区別して年老いた父母と同居することも目的としています>と頼もしい。グローバル化に介護問題を予見している。
1963(昭和38)年早生まれで、全く同年代の作家・重松清氏は<二十一世紀は、なんともフクザツな「未来」でした>と、エッセー『二十一世紀少年の「未来」』=『明日があるさ』(朝日文庫)所収=で書いている。初出は、実際に21世紀に到達した2001年2月、雑誌に掲載されたものだ。
小学校2、3年生当時、教室の後ろに掲示されたクラス全員の『未来の絵』にはドーム都市や宇宙戦争、海底都市、月面コロニー……が並び<きれいに、バラ色と暗黒の、希望と絶望の、喜びと悲しみのモザイク模様>になっていたそうだ。
それが21世紀という未来だった。「21世紀」という言葉には期待感と不安感が入り交じっていた。
だからだろうか。選抜高校野球の「21世紀枠」もまた、同じように期待と不安の複雑な思いがこもっているようだ。
1月24日、毎日新聞大阪本社であった第92回選抜高校野球大会(3月19日開幕・甲子園球場)の出場32校を選ぶ選考委員会。21世紀枠は困難克服、学業との両立、創意工夫した練習、地域活動による好影響……などが選考基準。2001年に設けられ、20年目を迎えている。
今回選ばれたのは平田(島根)、帯広農(北海道)、磐城(福島)の3校だった。
なかでも今の時代を映し出すような、象徴的な選考が平田だった。過疎化と野球人口減少に悩む地域で、数年前から地元の幼稚園・保育園の園児らを対象に野球体験教室を開いている。野球部内に「普及班」を設け、生徒が自主的に活動している。作成したマニュアルは県内外で参考にされるなど活動の輪を広げている点などが評価された。
推薦理由説明会(プレゼンテーション)で萬治正島根県高校野球連盟(高野連)専務理事は保育園での教室終了時、園児たちが「お兄ちゃん、だっこして」とお願いした光景を伝え、「彼らは子どもたちのヒーローなのです」と訴えた。
「野球離れ」には危機感が募る。昨年12月24日、根尾昂(中日)が日本プロ野球選手会と日本サッカー協会が展開する「こころのプロジェクト『夢の教室』」で、長野県千曲市の上山田小を訪ね、5年生に向けて授業を行った。クラス22人のなかに「野球をやってる子がゼロ」で「そりゃないだろうと思いました」と絶句していた。
日本高野連などが2018年に発表した「高校野球200年構想」でも「野球の底辺拡大」は重要課題に掲げている。選考委員長の八田英二・日本高野連会長は「野球人口の減少は大きな課題。平田は選手が主体となってやり方を考え、分かりやすい形で子どもたちに野球体験をしてもらっている」とたたえた。
磐城の主な選出理由は昨年10月の台風19号被害で災害復旧のボランティア活動を行ったことや文武両道だが、昨年春から地元小学生への野球教室も開催している。
21世紀枠特別選考委員の佐山和夫さん(ノンフィクション作家)は「世界的に野球離れが広まっている」と警鐘を鳴らしたうえ「日本の高校球児たちがわが事ととらえ、積極的に各地域で活動されていることに感動した」とコメントした。
もう一度、卒業文集を見返した。クラスの男子16人のうち、野球チーム(軟式・硬式)に所属していたのは7人。将来像に少しでも「プロ野球選手」と書いた者は5人いた。
「あのころの未来に ぼくらは立っているのかなぁ 全てが思うほど うまくはいかないみたいだ」と歌うSMAPの『夜空ノムコウ』をたとえに、重松氏は<あの頃思い描いていた「未来」の姿より、現実の「未来」はあまりカッコよくないみたい>と書く。
われら1970年代の野球少年からすれば、21世紀に野球少年が減ることなど考えもしていなかった。それでも「夜空の向こうには もう明日が待っている」。
球児が「野球離れ」に真正面から取り組む姿勢に明日を見たい。高野連も、プロ野球も……球界全体が真剣に本気になってきている。希望と期待感を持って21世紀の野球少年にエールを送りたい。 (編集委員)
◆内田 雅也(うちた・まさや) 1963(昭和38)年2月、和歌山市生まれ。以前も書いたが、小学校卒業文集では<野球の記者をしている>と書いた。夢がかなったなどと浮かれている場合ではない。大阪本社発行紙面の『内田雅也の追球』は14年目を迎える。年々、使命感や責任感は増している。
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