【内田雅也の追球】「控え以上」の捕手――1点差でしのいだ阪神・坂本の好リード

[ 2019年9月17日 08:30 ]

セ・リーグ   阪神2―1巨人 ( 2019年9月16日    東京D )

9回2死一塁、石川を三振に仕留めてガッツポーズの坂本(撮影・北條 貴史)
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 阪神捕手・坂本誠志郎はミットを掲げ、左腕はガッツポーズのような格好になった。球審に向け、完全捕球を明確に示すための動作なのだが、喜びもにじみ出ていた。

 9回裏2死一塁、最後の巨人・石川慎吾を藤川球児がフォークで空振り三振に取った時である。

 捕手は試合中、あまり感情を表に出さない。常に冷静に「次」を考え、喜んでいる間もないといった方がいい。坂本が最後に見せた所作は試合が終わったからこそ、それも勝ったからこそだ。

 リードは大変だったろうと容易に想像がつく。6回途中まで投げた先発オネルキ・ガルシアは毎回走者、毎回四死球と乱れた。それでも辛抱強く率いて、3併殺を奪うなど、最少失点でとどめた。6回途中からは救援4投手で1点のリードを守り切ったのだ。こんな時は喜べばいい。

 坂本は8月18日、この日と同じガルシアが先発した巨人戦(東京ドーム)以来、約1カ月ぶりの出場だった。

 調べてみると、自身が先発マスクをかぶるのは今季14試合目。これが4勝目(10敗)だった。前回勝利は7月27日巨人戦(東京ドーム)だが、坂本は6回限りで梅野隆太郎と交代している。捕手として最初から最後まで出場しての勝利は、7月5日広島戦(甲子園)、同月26日巨人戦(東京ドーム)に次いで、今季3度目だった。

 久々でも監督・矢野燿大の信頼は厚く、「誠志郎らしく、と言うか、しっかりやってくれた」とたたえていた。

 <坂本誠志郎は「考える野球」ができる選手だった>と、母校・履正社監督の岡田龍生が今年7月1日発行の著書『教えすぎない教え』(竹書房)で書いていた。今夏の甲子園大会で初の全国制覇を果たす前のことだ。

 著書のタイトルにあるように<私が言う前に、選手たちが気づいたことを指摘し合う。私が望む形を、坂本は見事に具現化してくれていた>。

 履正社優勝は8月22日だった。母校優勝の後、ずっと出番のなかった坂本にとっては、後輩たちに贈る祝い星になった。

 阪神には梅野がいる。今や誰もが認める正捕手だ。ただ、1人の捕手でシーズンを通せる時代ではない。大リーグで言う「バックアップ・キャッチャー」が必ずいる。正捕手は心身、そして頭の休養が必要となる。いわば「控え捕手」以上の存在なのだ。優勝は消え、クライマックスシリーズ(CS)進出の可能性も薄らぐなか、意味ある勝利となった。=敬称略= (編集委員)

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