【岩手】大船渡・佐々木 怪物ノーヒッター!155キロ13K、よみがえる「江川伝説」

[ 2019年7月19日 05:30 ]

第101回全国高校野球選手権 岩手大会3回戦   大船渡10-0一戸 ( 2019年7月18日    花巻 )

4回2死二塁、一戸・大沢を三振に仕留め、笑顔を見せる大船渡・佐々木(撮影・木村 揚輔)
Photo By スポニチ

 第101回全国高校野球選手権(8月6日から16日間、甲子園)は18日、30大会172試合が行われた。岩手大会では今秋ドラフトの超目玉、163キロ右腕の大船渡・佐々木朗希投手(3年)が一戸との3回戦に先発。1四球だけで13三振を奪い、コールド勝ちで6回参考記録ながら無安打無得点を記録した。最速は155キロを計測し、ネット裏の日米13球団のスカウト陣も驚がくした投球。19日は北北海道大会決勝など20大会80試合が行われる。

 当たらない。前に飛ばない。佐々木が少しギアを上げた。うなる直球に、一戸打線のバットが空を切る。前に飛ばされたのは変化球だけだ。直球はファウルするのがやっと。満員のスタンドはどよめき、沸き返った。

 「(初戦より)球速というか、少しギアを上げた。必要な場面で必要なボールを投げました。ストレートで空振りを取れていたので良かった」

 圧巻の93球。佐々木は淡々と振り返るだけだったが、スコアボードに「H」のランプをつかせなかった。先頭打者から4者連続三振に始まり、毎回の13奪三振。許した走者が4回1死からの四球だけなら、前に飛んだアウトは全て変化球で、それも外野までは飛ばなかった。半分以上の55球を投じた直球は、4回1死からの33球目がやっとファウルとなり、バットに当てられたのはファウルになった8球だけだった。

 直球がバットに当たらない――。こんなシーンを見るのは「昭和の怪物」江川卓以来かもしれない。73年センバツで、作新学院・江川は優勝候補・北陽(現関大北陽)を相手に2回に5番打者がファウルするまでバットに当てさせなかった。地方大会と甲子園の違いはあるが、あの伝説がよみがえるような「ノーノー」ピッチング。高校最速163キロを出して以降、球速を抑えながらギアを入れ替える投球に取り組んできた成果が表れていた。

 「ヒットは打たれなかったけど四球を出してしまった。そこはなくしたい」。公式戦では初の無安打無得点、2回完全の初戦から計8回無安打でも、佐々木に満足感はない。トップギアならどんな投球になるのか。複数の球団幹部も顔をそろえたネット裏からも驚嘆の声が漏れた。ソフトバンク・三笠杉彦GMは「本当に12球団1位指名の可能性がある。明日連れて帰って投げさせたいくらい」と強調。佐々木は国内プロ志望ではあるが、フィリーズの大慈弥功環太平洋担当部長も「全米ドラフトの1巡目1位も行ける。リップサービスではなく(メジャーに来れば)サイ・ヤング賞を獲れる」と絶賛した。

 「この大会を目標に進学したので、何が何でもチームで勝てるように頑張りたい」。熱い絆の仲間と目指す甲子園へ――。「令和の怪物伝説」は、まだ序章にすぎない。(秋村 誠人)

 《開門1時間前に400人が列》高校史上最速右腕を一目見ようと花巻球場は朝からお祭り騒ぎだった。当初の開門時刻は午前8時だったが、1時間前には約400人が長打の列を作り、7時13分に開門を早めた。一番乗りは岩手県一関市から来た大沼敏樹さん(43)で「有給を取り朝2時半から並びました。家族や同僚に自慢するために」。試合開始の9時には球場は5000人の観衆で埋まり、3回表の9時30分には外野席を開放した。

続きを表示

2019年7月19日のニュース