骨折を隠して本塁打も “ド根性の男”国際武道大・勝俣よ、道を切り開け

[ 2019年6月25日 12:54 ]

侍ジャパン大学日本代表選考合宿の紅白戦で安打を放つ国際武道大の勝俣
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 21日から23日まで侍ジャパン大学日本代表選考合宿が平塚で行われた。今秋ドラフト1位候補右腕の明大・森下ら24人が選出され、7月の日米大学野球選手権に臨む。

 一方で、昨年メンバー入りしながら2年連続の代表入りを果たせなかった面々もいた。そのうちの1人が国際武道大の勝俣翔貴内野手(4年)だ。東海大菅生時代は投手との二刀流で活躍。強烈なスイングと長打力が持ち味の左打者だ。U―18高校日本代表では当時1年生だった早実・清宮(現日本ハム)が膝を痛めた際に代役4番も担った。上位でのプロ入りを目指して国際武道大に進学。1年春から4番を任されて昨年は大学代表入りも果たし、今年は主将に就任。4月にはリーグ戦で100安打達成と順風満帆に歩んできたはずだった。だが、その時、実は右手首に激痛を覚えていた。「なんとか打席に立っていたけれど、かなり痛くて。最後は右手を離して打ってました」。強打者の証でもある有鉤(ゆうこう)骨の骨折だった。

 岩井美樹監督は「あいつ黙ってたんだよ。それなのにホームラン打ったりして、もうびっくり。すぐ病院に行かせたよ」と振り返る。いつも笑顔で、報道陣に囲まれるとはにかみながら訥々と話す姿に少しほわっとしたところがあると思っていたが完全に覆された。すごい根性の持ち主だった。大学で主将になったのも納得だった。東海大菅生の若林弘泰監督は「勝俣はそういう男。昔からガッツがある」と話す。

 5月に手術し、6月9日の全日本大学野球選手権開会式で準優勝杯の返還に来た時は「抜糸したばかりなんです」と頭をかいていた。その時すでに代表候補に選出されており、周囲からは心配の声があがる中「少しずつ練習を再開している。合宿にも行きます」ときっぱりと話した表情が忘れられなかった。

 なにがそこまで勝俣を突き動かすのか。手術後初めて投手と対峙した平塚合宿で話を聞くと、「やっぱりアメリカに勝ちたい。昨年もそうだし、高校の時も負けましたから」。U―18では自国開催のワールドカップ決勝で敗れて準優勝に終わり、米国で戦った昨年は2勝3敗と惜しくも負け越した。雪辱の念は誰よりも強かった。

 だが、ケガの影響にはあらがえず再び日の丸をつけることはかなわなかった。生田勉監督は「昨年のメンバーの経験も生かしたかったが…」と話し、苦渋の決断だったことをにじませた。ケガさえなければ…。代表関係者誰しもがそう思っていただろう。昨年12月に体の強さの秘けつを聞くと「うちは母親がすごく厳しくて、絶対ご飯を残してはいけなかったんです。高校の食事が楽に思えたくらい。でも、そのおかげで体が強くなったのかな」と笑っていた。大ケガは今までなかっただけに、本人が一番無念だっただろう。それでも勝俣は「何ごとも経験」と前を向いた。

 いよいよ学生野球最後のシーズンとなる今秋リーグ戦。ドラフトの行方も占う大事なシーズンだ。強打者というだけでなく、「ド根性」も評価され、勝俣の望む進路が開かれることを願ってやまない。(記者コラム・松井 いつき)

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