大谷か黒田か、漫画か、映画か

[ 2016年10月24日 09:10 ]

<広・日>真っ赤に染まったマツダスタジアムのマウンドに上がった大谷
Photo By スポニチ

 【長久保豊の撮ってもいい?話】ドカベン・坂田三吉の通天閣打法はぎりぎり許そうかと思う。アストロ球団・宇野球一のジャコビニ流星打法はダメかな。侍ジャイアンツ・番場蛮のハイジャンプ魔球や大回転魔球はボーク取られちゃうから、ちょっとね。

 CSでの日本ハム・大谷翔平選手の活躍に「漫画みたい」の声が上がった。往年の野球漫画小僧としては、どのへんが漫画みたいなのか少しばかり考えてみた。

 許容範囲とした通天閣打法は100メートル以上の高さに打球を打ち上げ、相手のエラーを誘いランニング本塁打を狙うというもの。

 初速160キロ、86度の角度で打ち出せば打球は100メートルほどの高さに上がり9秒かけて28メートルの地点に落下する(数値は概算、空気抵抗がないという条件)。初速190キロなら二塁ベース付近に落下するまで10秒7。ベースランニング一周を14秒とすればボールの転がり方次第では、もしかしたらもしかする(しないけど)。

 球速はどうだろう。

 「行くでぇ~豆タン」

 ボクの記憶が確かなら野球漫画の巨匠・水島新司さんの作品には2人の165キロ投手が存在する。「男どアホウ甲子園」の藤村甲子園と「光の小次郎」の新田小次郎。それは本編で描写されたものではなく別作品のエピソードであったり、コラボ作品の中でのことだ。藤村甲子園はその1球で肩を壊し、新田小次郎の1球にドカベン山田太郎のバットは空を切った。

 漫画の中に現役選手を登場させるなど現実と創作の境界線を巧みに往来する水島作品の中でも、165キロは創作の世界に位置する。

 「不器用ですから」

 一方の黒田博樹投手。風貌、生き方、もう(高倉)健さんである。涙の渡米シーンは山田洋次監督の「遙かなる山の呼び声」、日本球界への復帰は「幸福の黄色いハンカチ」のラストシーンとだぶって見える。「いつまでも待っている」人がいて「そこに帰って行く」男がいた。ヒロインの倍賞千恵子さんを広島ファンの姿に置きかえれば同じだ(米球界は網走刑務所ではないが)。

 日本シリーズ第1戦で漫画を超えた男・大谷翔平はマツダスタジアムの赤い波に飲まれた。第3戦は良質な人間ドラマを生きる黒田博樹が白と青の波に対峙する。

 大谷はこのままでは終われない。そして黒田も広島の地で最後のマウンドを飾りたいはず。

 広島の2連勝とはいえ第7戦まで行くような気がする。

 結末は漫画みたいなのか、映画のラストシーンみたいなのか。このシリーズは面白い。(編集委員)

 ◆長久保 豊(ながくぼ・ゆたか)1962年生まれの54歳。学生時代に男どアホウ甲子園のようにブロックサインでカンニングをしたが失敗、現在に至る。

続きを表示

「第101回全国高校野球選手権大会 各地区結果」特集記事

「第90回(2019年)都市対抗野球大会」特集記事

2016年10月24日のニュース