【西武・西口文也の決断1】次女にも活躍する姿を見せたかった

[ 2015年12月8日 12:50 ]

9月28日のロッテ戦後に行われた引退セレモニーで胴上げされる西武・西口

 「パパへ」。そう書かれた一通の手紙がある。

 これからは、れのがパパのやくにたちたいです。

 でもね

 れのは、もっといっぱいパパがなげているしあいが見たかったな。

 早くうまれてくればよかった――。

 ライオンズ一筋21年の現役生活にピリオドを打った、西口文也投手(43)の次女・玲乃音(れのん)ちゃん(6)が引退したパパに贈った手紙だ。「長女の時は頑張って仕事をしている姿を見せられたけど…。次女にも活躍するところを見せたかったね」。今季を含めて過去3シーズン勝ち星なし。9月上旬、ユニホームを脱ぐ決意をした。

 「来年はどうしたいんだ?」。前年の14年オフ。球団との話し合いで西口は「もう一年、投手としてやりたいです」と答えた。生え抜きの功労者。もう一年。その意思を尊重してもらった。しかし、数字を残せなければ…。ラストイヤー。それは両者の間での暗黙の了解でもあった。

 「結果を出せなかったのが全て。プロとして求められるのは結果。だから後悔は全くない。やり切った思いの方が強い」

 2歳上の兄の影響で、小2で始めた野球。「プロの選手になれるなんて考えもしなかった。商業高校に進んだのも、普通に就職しようと思っていたから」。転機は和歌山商1年の時。内野手だった西口が打撃投手をしていると、当時の監督から「紅白戦で投げてみろ」と言われた。同学年に投手は1人だけ。「仮に投手が3人とかいたら僕はやっていなかった。ピッチャーになったから、ここまでこられたのだと思う」。運命は大きく変わった。立正大で、プロ入り後も「代名詞」となったスライダーに磨きをかけた。基本は1種類だが緩急、そして手首の角度で打者を幻惑した。通算2082奪三振は歴代18位。最多奪三振のタイトルも2度、獲得した。

 「今はボーッとしている時間が幸せ。野球のことを考えずにリラックスできている」。そう話した西口は「子供と思いっ切りボウリングをやりたいね」と笑う。右肩、肘などへの負担を考慮し、現役時代は極力控えていた。玲乃音ちゃんの手紙にも「やめたらボウリングもできるね」と書かれている。その日が来るのを、パパは心待ちにしている。 (鈴木 勝巳)

 ◆西口 文也(にしぐち・ふみや)1972年(昭47)9月26日、和歌山県生まれの43歳。県和歌山商では甲子園出場なし。立正大を経て、94年ドラフト3位で西武に入団。3年目の97年には15勝を挙げ最多勝、沢村賞、MVP、最多奪三振、最高勝率のタイトルを獲得。98年にも最多勝、最多奪三振。ベストナイン2度、ゴールデングラブ3度。通算成績は436試合で182勝118敗6セーブ、防御率3・73。1メートル82、75キロ。右投げ右打ち。

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