骨折内川の手袋しのばせ…マッチ弾から日本Sタイ記録6連打

[ 2015年10月25日 05:30 ]

<ソ・ヤ>4回1死、工藤監督は先制ソロの松田を出迎える。松田のズボンの左ポケットには内川の打撃用手袋が…

日本シリーズ第1戦 ソフトバンク4-2ヤクルト

(10月24日 ヤフオクD)
 マッチが4番不在に燃えた!ソフトバンクは24日、先発全員安打でヤクルトを圧倒。就任1年目の工藤公康監督(52)はシリーズ初采配を勝利で飾り、2年連続の日本一へ最高のスタートを切った。4回に松田宣浩内野手(32)の先制弾を皮切りに、シリーズタイ記録の6者連続安打をマーク。内川聖一外野手(33)の肋骨骨折が判明し、シリーズ欠場が決まったが、「元気印」の松田が主将に代わってチームを引っ張った。

 お立ち台に上がった松田はテレビカメラの向こうに呼びかけた。「内川さん、見てましたか!」。突然のキャプテンの離脱を選手会長が救った。4回1死、石川の外角低めに沈む123キロシンカーに体を伸ばし、食らいつく。暗雲を振り払う打球は左中間席へ届いた。自身3度目の日本シリーズで飛び出した初本塁打は連続日本一への号砲だった。

 「(シリーズに)3回出させてもらったけど、ホームランは格別。内川さんが試合前、みんなの前で話してくれて日本一になりたい気持ちが一つになった」

 試合前、チームに衝撃が走った。4番・内川が肋骨骨折でシリーズ出場が絶望となった。ロッカーに姿を見せた主将は「試合前なのに申し訳ない。出られないから応援に回る」と言った。選手会長として一緒にチームを引っ張ってきた松田は、この言葉を心の奥深くに受け止めた。内川のロッカーから打撃用手袋を「無断」で拝借し、ユニホームのズボンの左ポケットに入れた。「自分が骨折した時、内川さんもそうしてくれた。内川さんの思いを持つことで一つになれた」。内川と2人で打った決勝弾だ。

 今季は打率・287、35本塁打、94打点と自己最高のシーズンを送ったが、3連勝突破したCSファイナルSでは3試合で9打数1安打、3三振と振るわなかった。日本シリーズも過去12試合は打率・182の「逆シリーズ男」だった。短期決戦に弱い自分から卒業すべく、開幕前には最後までスコアラー室に居残り「スタンスが大きすぎた。良かったころの肩幅へ戻した」と呪縛から逃れるすべを見つけ出した。

 松田から火の付いた4回は1番・川島まで6者連続安打のシリーズタイ記録を樹立。先発全員安打は球団ではシリーズ初となった。監督として初采配ながら、選手としては14回出場し、11度日本一に輝いた工藤監督は、初戦の意味を誰よりも知る。「松田が(打線の)緊張を一振りで楽にしてくれたのが、6連打につながった。内川がいないことで、みんなが4番に頼らずに、つなぐ意識を持ってくれた」と頼もしそうに目を細めた。

 元気印である背番号5は「これをやりたかった」と3万5732人で埋まったスタンドと一緒に「1、2、3、マッチ」のパフォーマンスで締めくくった。その絶叫はきっと、手負いの内川へ届いたはずだ。連続日本一へ最高の発進だった。 (福浦 健太郎)

 ≪シリーズ初本塁打≫6連打の口火を切ったのは松田のシリーズ初本塁打。11年第3戦、14年第5戦に次ぎ自身3回目の勝利打点となった。シリーズの最多勝利打点は長嶋茂雄(巨)の11回だが、チームでは野村克也、ハドリ、小久保裕紀に並ぶ最多回数だ。

 ≪球団初の先発全員安打≫ソフトバンクが先発全員の15安打。先発全員安打は、66年第6戦巨人の全員安打を含み史上10度目で球団初となった。4回には6者連続安打の猛攻。シリーズの1イニング6打数以上連続安打は、07年第3戦中日の7を筆頭に史上5度目。チームはダイエー時代の03年第2戦でも記録しており、2度はソフトバンクが初めてだ。また、犠打、犠飛を挟まない6者連続安打は、前記ダイエー、05年第2戦のロッテに並ぶ最多タイ記録。

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