【野球のツボ】大谷が優先すべきは「投手としての地位確立」

[ 2013年4月10日 16:11 ]

多くの野球人は「投手・大谷」に期待を寄せているようだが…

 二刀流で注目された日本ハム・大谷だが、試行錯誤が続いているように見えてならない。首脳陣も、大谷をどういう形で調整させていくか、いろいろ取り組んでいるようだが、これで行くという方法はまだ確立していない。

 9日の楽天戦で田中と対戦したあと、11日には2軍戦で登板。1軍と2軍を行ったり来たりしている現状は、本人にとってプラスではないと思う。特に日本ハムの場合、1軍が札幌、2軍は千葉の鎌ケ谷と、地理的な違いも大きい。高校を出たばかりのルーキーにとって、負担は大きいはずだ。

 2月のキャンプのときに会った栗山監督は「投手としても、打者としても本当にいいんです」と甲乙つけがたいと評価していた。だからこそ、二刀流を諦めてはいないのだと思うが、二兎を追う者、一兎をも得ず、という言葉もあるように、どっちつかずのまま大成せずに終わることを危惧してしまう。

 これまで、大谷のスタメン出場は5試合。出たり、投手練習のため休んだり、という状況のまま結果を出せるほどプロは甘くない。

 大谷に関しては、野手をしながら、投手練習をしていると、外部からは見える。確かに非凡な打撃センスはうかがえるが、1軍のレギュラーとして地位を確立するには、まだまだ力不足。一方で、160キロの可能性のある投手として、魅力はこちらの方が勝っている。私に限らず、多くの野球人は「投手・大谷」に期待を寄せている。

 今のスタイルがはまらないなら、発想を切り替え、「投手にウエートを置きながら、野手でも使う」で行ってほしい。3割打者は育てて作ることが出来るが、160キロ出せる才能は天性のもの。投手として1軍で登板できるまで、野手としても2軍戦で使った方が、行ったり来たりの無用なストレスを解消することにもなる。

 大谷が右投げ左打ちなのも、投手を優先すべきと指摘する根拠のひとつだ。左打ちだと、使うのは右腕。打席で右腕の強さが求められるのに、投球でも右に負担をかけることを繰り返せば、ケガのリスクは高くなる。野手優先だと、この先、特打などで打ち込みも必要になってくる。基礎体力が十分でないだけに、バットを振ると、必然的に右ヒジを酷使することになる。それが心配だ。

 1軍だったり、2軍だったりと焦って使う必要は全くない。少なくとも、1軍ローテに入れるところまで「投手・大谷」を仕上げていくことが、今は先決。二刀流起用法については、それから決めても遅くない。(前WBCコーチ・高代 延博)

 ◆高代 延博(たかしろ・のぶひろ)1954年5月27日生まれ、58歳。奈良県出身。智弁学園-法大-東芝-日本ハム-広島。引退後は広島、日本ハム、ロッテ、中日、韓国ハンファ、オリックスでコーチ。WBCでは09年、13年と2大会連続でコーチを務めた。

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