大竹しのぶ 涙の弔辞「小さな白い箱を蹴破ってくれる方が現実味ある」

[ 2012年12月27日 14:14 ]

中村勘三郎さんの葬儀・告別式で弔辞を述べる俳優の大竹しのぶ

 急性呼吸窮迫症候群のため5日に57歳で亡くなった歌舞伎俳優・中村勘三郎さんの葬儀・告別式が27日、東京都中央区の築地本願寺で営まれ、77年の舞台共演から親交があり、最期をみとった女優の大竹しのぶ(55)が弔辞を読んだ。

 大竹は「哲明(のりあき=勘三郎さんの本名)さん、あなたがいなくなってから3週間と少しが過ぎました。私たちはまだその事実を受け入れることができず、ただただ途方に暮れた日々を過ごしています」と語り始め、「そんな小さな白い箱を蹴破って“冗談じゃないよ、全く”…そんなことを言いながら、あの世界一チャーミングな笑顔で私たちの前に現れてくれる。その方がずっと現実味があるのです」とポッカリ穴があいた心のうちを明かした。

 大竹は今年7月、食道がんの手術後2日目の勘三郎さんを見舞った。勘三郎さんは痛み止めを打ち、点滴を引きずりながらICU(集中治療室)の廊下を歩く姿を大竹に見せた。

 「まるで花道を歩いているあなたに向けるように大きく熱い拍手を送りましたね。褒められることが大好きなあなたはうれしそうに、ちょっと恥ずかしそうに笑い“大竹しのぶに拍手もらちゃったよ”と」

 以後、4カ月に及ぶ闘病生活が始まった。大竹は「あんなにたくさんの人を幸せにして、あんなにたくさんの人に愛されてきたあなたが、なぜこんな目に遭わなければならないのか。どうしても理解できない苦しい4カ月でした」と振り返った。

 それでも、病気と懸命に闘った勘三郎さんの姿に、主治医も「こんなにすごい人はいません。僕たちが教えられます。だから、この人のために何とかしたいと思うのです。本当に何とかしたいと思うのです」と涙を浮かべたこともあったといい、「やんごとなき精神力を持つ恐るべし中村勘三郎」と呼んだという。病室でも、思うように体が動かせなくても表情と手首だけで見得を切り、看護婦から拍手をもらった。

 「あなたと今なぜ、このお別れをしなければならないのか、当分、私たちは答えを見つけることができないと思います」。今年6月、東京・渋谷で行われたコクーン歌舞伎「天日坊」を見た時、勘三郎さんは「あいつら(勘九郎、七之助)よかったでしょ。まだまだだけど。オレのスピリッツは引き継いでくれたかな」と口にしたという。「そう、あなたの魂を引き継いだ勘九郎がいます。七之助がいます。その答えを彼らが出してくれる日まで、私たちは頑張っていきます」

 最後は涙声で「のりさん、大好きですよ。今も、これからも。ありがとう。またね」と別れを告げた。

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