17時間25分後に水原元通訳の証言はいかに一転したのか?ESPN電子版が時系列に沿って報道

[ 2024年3月23日 12:11 ]

MLBが大谷、水原氏の捜査手続き開始

大谷翔平(右)と水原一平氏
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 米国の人々の関心は、なぜ水原一平元通訳の証言が24時間以内に変わり、全く違うストーリーに転じたのか、本当に通訳が大谷に知られることなく、勝手に多額のお金を引き出せていたのか、真実はどこにあるのかだ。

 本格的な調査はこれからで、野球用語を使えばまだ1イニング目との認識だ。そんな中、水原元通訳を電話取材し、一連の報道をスタートさせたESPN電子版のティシャ・トンプソン記者が22日(日本時間23日)に時系列をたどりながら、一連の動きを伝えている。

 この事件が明るみに出たきっかけは、数カ月前にESPNが受け取った情報だった。複数の記者が調査を行い、ESPNが十分な事実確認を得たのは米国時間17日夜の深い時間だった。その時初めて主要な関係者に問い合わせた。それはMLB関係者、大谷の代理人、連邦法執行機関、そしてドジャースなどだ。

 17日米国東部時間午後7時30分(韓国18日午前8時30分)、MLBコミッショナーのロブ・マンフレッドは、開幕シリーズの準備で韓国に滞在しており、大谷に関して何かが起きていると知った。MLBの情報筋によると、MLBは18日早朝からカリフォルニアの連邦当局に回答を求めたが、返答はなかった。

 ▽18日午後3時(韓国19日午前4時) ESPNが大谷のネズ・バレロ代理人に連絡、大谷の名前が合計100万ドルの2件の電信送金に載っていたことについて質問。送金は昨年9月と10月で、マシュー・ボイヤー氏の南カリフォルニアのブックメーキング業務に送金されていた。バレロ代理人から即座に返答はなかった。

 ▽18日午後5時30分(韓国19日午前6時30分) 大谷のために新たに雇われた危機管理担当者がESPNに対応。その後の数時間、担当者とESPNの記者が何度か話したが、担当者は大谷陣営から情報を得ている最中であるとした。

 ▽18日午後8時30分(韓国19日午前9時30分) 担当者が、大谷が水原氏の借金を支払っていたと明かした。バレロ代理人が水原氏に尋ね、(水原氏が)真相を打ち明け、それが真実だと言った。大谷自身も水原氏の借金を50万ドル単位でカバーしたとバレロ氏に伝えたと言う。ただし、担当者も大谷が水原氏経由でバレロ氏とコミュニケーションを取ったと言ったかどうかは明確ではない。担当者の大谷の言葉は「はい、いくつかの大口の支払いを行いました。それが送れる最大の金額でした」というものだった。ESPNの記者は、次は水原氏自身から取材したいと考え、担当者は手配すると返答している。

 ▽19日午後9時05分(韓国20日午前10時05分) 大谷の広報担当者がESPNに対し、スポーツ賭博の借金が少なくとも450万ドルに上ることを認めた。ESPNはその前から、他の情報源を通してこの額を知っていた。

 ▽19日午後10時30分(韓国20日午前11時30分) 韓国にいる水原氏が90分間の電話インタビューに応じた。大谷の広報担当者も同席した。水原氏は、2021年にサンディエゴで行われたポーカーゲームでボイヤー氏に出会ったとESPNに明かした。当時エンゼルスでチームメートだったデビッド・フレッチャー内野手は、ESPNにそのポーカーゲームに参加したことは認めたが、通訳にボイヤー氏を紹介したわけではないと述べた。フレッチャーとボイヤー氏の業務に詳しい情報筋はフレッチャーの知人を介してボイヤーがチームホテルのポーカーゲームに参加できるようになったとESPNに証言している。フレッチャーは以前、ゴルフでボイヤー氏に一度会ったと言い、ボイヤー氏の組織で賭けをしたことはないと付け加えた。ESPNのインタビューで、水原氏はボイヤー氏と出会った直後からクレジットで賭けを始め、野球以外の複数のスポーツに賭けたと明かした。彼はその前から「ドラフトキングス」で賭けをしており、ボイヤー氏の業務が違法であることを知らなかったと言う。当時、水原氏のエンゼルスでの給与は約8万5000ドルで、2022年の終わりまでに100万ドル以上の損をして、友人や家族からお金を借りていた。「翔平にはこのことは打ち明けられなかった。生活費をやり繰りするのも大変だったし、その日暮らしの毎日だった。というのは彼のライフスタイルにも合わせなければならなかったから。しかしながら、彼に言いたくなかった」と水原氏。水原氏は2013年に初めて出会った大谷との関係を「兄弟のような」と表現、妻よりも大谷氏との方が時間を過ごしてきたと言う。水原氏の借金は2023年初頭に400万ドルに膨れ上がり、その時点で初めて、大谷に助けを求めたと明かした。大谷の信頼を失うことを恐れ、また誰かが家に来るかもと自分自身の身の安全も心配だった。「私の状況を翔平に説明しました。明らかに彼はそれについて喜んではいませんでしたが、私を助けると言ってくれました」。水原氏が借金をしていた相手がブックメーカーであることを大谷が知っていたかどうかを尋ねると、水原氏は「まったく気づいていなかった」と答えた。「私は借金を返済するために電信を送る必要があると伝えただけだった。彼はそれが違法かどうかについて尋ねなかったし、それについて質問しなかった」と水原氏。大谷が借金を支払うことに同意した後、彼ら2人は大谷のコンピューターで大谷の銀行口座にログインし、数カ月にわたり8~9回の電信送信を行い、50万ドルずつ送金した。取引の説明欄には「ローン」と記載した。水原氏によれば、最後の支払いは10月だった。ESPNが水原氏に、大谷に借金を返済するよう頼むことで、自分自身や大谷を危険にさらす可能性があると思ったかどうかを尋ねると、水原氏は「その当時、私たちのどちらもそれについて考えていなかったと思います」と答えた。水原氏は、賭博で失った金額が全部でいくらだったかは明かさなかったが、少なくとも450万ドル以上であることは認めた。「恥ずかしい」とも言った。「妻は今まで、このことについて全く知らなかった」と明かす。水原氏は、大谷に打ち明けた後、数週間つらかったし、罪悪感を感じたが、大谷はなにもなかったかのように前に進んでくれたという。「彼を見るのもつらかったが、素晴らしい人で、何もなかったかのように生活を続けてくれていた」。さらに大谷自身が賭けをしたことはなく、「賭博はひどい」と考えていることを付け加えた。「彼は人々やチームメートがいつも賭けをしているのを見て、『なぜこんなことをしているのか?賭博は良くない』と言っていた。遠征中カジノに行こうと誘われることもあったが、翔平は決して行かなかった。そんなことに興味はなかった」と証言した。

 ▽20日午前6時05分(韓国20日午後7時05分) ドジャースはパドレスとの開幕戦を迎えた。大谷はこの試合で2本のヒットを打ち勝利に貢献。試合の最後の数分間、水原氏と笑顔でベンチで一緒にいる姿が見られた。

 ▽20日午前9時(韓国20日午後10時) MLBの情報筋によると、MLB関係者はこの時点で水原氏が前夜にESPNに語った内容について認識していた。ただしまだ連邦当局からの返答は受け取っていなかった。

 ▽20日午前10時(韓国20日午後11時) 試合後、ドジャースはクラブハウスでミーティングを開き、オーナーのマーク・ウォルター氏が選手たちに対し、ネガティブなニュースが出て来ると伝えた。それは後にESPNに語ったチーム関係者の証言で、水原はみんなに謝罪し、ギャンブル依存症であることを伝えた。アンドリュー・フリードマン編成本部長も発言、大谷が水原氏の損失をカバーしたと告げた。大谷の広報担当者によると、大谷はホテルに戻る途中で、クラブハウスで何が話されていたかについて質問を始め、彼の代理人たちは、その時に大谷が水原氏の話を認識していなかったことに気付いた。大谷の代理人たちはこの問題に対処している間も、水原氏を通じて大谷とコミュニケーションを取り続けていたためで、水原氏は大谷自身には何が起こっているかを言っていなかった。大谷の広報担当者によれば、その時に初めて大谷は自分の口座からお金が不正に引き出されていたことを知った。

 ▽20日午前11時32分(韓国21日午前0時32分) 大谷の広報担当者は、ESPNに記事を公開しないよう勧告した。「一平が嘘をついていた。大谷は何も知らなかった」と彼は言う。これに続く一連の迅速な電話のやりとりの中で、広報担当者は、大谷と代理人のすべての会話が水原氏を介して行われていたことを強調した。

 ▽20日午後1時15分(韓国21日午前2時15分) 告発の重大さと矛盾が浮かび上がってきたため、ESPNは大谷の広報担当者に窃盗の申し立てを公にすること、そしてそれを午後1時45分までに行うよう求めた。大谷の広報担当者は、水原氏が意気消沈しており、彼の状況を家族に説明する必要もあると説明、同時に弁護士が声明を準備しているとも返答した。広報担当者は午後2時までに声明を出すと約束した。

 ▽20日午後2時(韓国21日午前3時) 大谷の弁護士であるバーク・ブレットラーLLPは、ESPNに対して声明を発表。「最近のメディアからの問い合わせに対応する過程で、大谷が大規模な窃盗事件の被害者であることが判明。私たちはこの問題を当局に提出します」とした。大谷の広報担当者はさらなる質問には答えず、声明は誰が窃盗を犯したかについても特定していなかった。

 ▽20日午後2時30分(韓国21日午前3時30分) ドジャースは窃盗事件について知り、即座に水原氏を解雇した。

 ▽20日午後3時55分(韓国時間21日午前4時55分) ESPNが水原氏に電話で取材。水原はインタビューで嘘をついたとし、既に述べていた多くのことを撤回した。大谷が水原氏のギャンブル依存症のことや負債のこと、それらを返済しようとしたことについても全く知らなかったと言い変えた。盗難または横領の疑いがかけられていることについて尋ねると、コメントしないように言われたと返答。しかしながら誰からそう指示されたかは答えなかった。「明らかにこれは全て私のせいで、報いを受けるつもりです」と言う。さらに「大谷が状況を認識したのはいつか?」と聞くと、「私は何も答えてはいけないと言われました」と返事。「それは大谷の代理人なのか? 彼らはあなたのことも代表しているのか?」と聞くと、「いいえ」と答えた。「これらのことを話すために何かの形で支払いを受けていますか?」の質問には「いいえ」、「これらのことを言うためになんらかの合意はかわされましたか?」についても「いいえ」、「あなたは自発的に、自由な意志でこれを行っていますか?」については「はい」と答えた。「あなたは野球に賭けましたか?」については「いいえ」、「大谷に嘘をつきましたか?」には「はい」と返事した。この件について通訳をしている時に、大谷に故意に誤った情報を伝えたことがありますかと尋ねると、「いいえ、そんなことはありません」と返事した。ESPNの記者は最後の質問としてテキストメッセージを送った。「大谷の口座から、彼に知らせずに、お金を引き出しましたか?」。それについての返答はなかった。

 ▽20日午後4時13分(韓国21日午前5時13分) 大谷の広報担当者はESPNに、ここ数日間に起きたことは、水原氏が通訳としての立場を使って、大谷への情報をコントロールできていたとし、大谷は何が起こっているかを理解していなかったと説明した。新しい通訳が呼ばれた試合後のクラブハウスのミーティングまで、何も知らなかった。「大谷は、何か調査があるなんて知らなかった。試合後にそれを知ったんだ」と広報担当者は説明している。

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