【槙原寛己氏 感涙したWBC準決勝】流れを引き戻した吉田にしかできない超高等技術を駆使した一発

[ 2023年3月21日 17:48 ]

<メキシコ・日本>7回、同点3ランを放った吉田を迎える大谷ら(撮影・会津 智海)
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 スタンドで見ていて思わず涙が出た。09年決勝のイチローの決勝打に匹敵する最高のシーン。決めたのは村上だが、流れを引き戻したのは間違いなく吉田のバットだった。

 7回の同点3ラン。吉田にしかできない超高等技術を駆使した一発だった。3球目のチェンジアップを空振り。最後も同じ球種で決めに来るイメージはあっただろうが、打ったのは内角低めのボール球。普通なら絶対にファウルになるコースだ。吉田はバットをボールの下に入れ、手首を返さず内側から回転をかけた。ゴルフでいうフェードボール。打球は切れずに右翼ポール際に飛び込んだ。

 大谷もそうだが自分で還すだけでなく、出塁もできる。9回無死二塁ではカウント3―0。4球目の甘いストライクを打ちにいっても良かったが、チーム打撃に徹した吉田は見送って、最後は四球を選ぶ。「つなぎ」の姿勢が、村上の逆転サヨナラ打を呼び込んだ。

 佐々木朗は相手先発も好投しての投手戦で4回はやはり力んだ。直球がシュート回転し、先制3ランはフォークが高めに抜けた。それでも最高の舞台での登板は今後の野球人生につながる経験になっただろう。将来のメジャー挑戦も含めて自身の「現在地」を把握したはず。若手が多い侍ジャパン。次の世代につながる1勝だった。

 さあ決勝。侍ジャパンは勢いに乗っているが、米国も打線好調だ。ロースコアの試合にはならないとみる。投手は基本に返って、とにかく先頭打者を出塁させないこと。打線では再び、走者がたまった場面で村上が打席に立つはず。どちらが優勝したいとの思いが強いのか。ぜひ、14年ぶりの素晴らしい景色を見せてほしいと思う。(スポニチ評論家)

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