ソフトバンク・松田 チームの先頭に立つベテランの武器と信念「プロ野球選手は必死にやる」

[ 2022年8月12日 08:00 ]

5日の楽天戦初回、適時内野安打を放ち声を出して喜ぶソフトバンク・松田(撮影・岡田 丈靖)              
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 ベンチに39歳の「ビッグボイス」がいるのと、いないのでは、こんなにも違うのか。たまたまかとも思うのだが、松田が1軍に戻ってきてからソフトバンクの勢いが8月から少し良くなってきた。

 松田は7月29日に新型コロナウイルス陽性者の濃厚接触の疑いで「特例2022」により、出場選手登録を抹消。チームは同日の西武3連戦初戦を落としたのに始まり、2カード連続負け越しとなる1勝1分け4敗の成績だった。藤本監督も「ベンチもマッチ(松田)がおらん時に声は出すようにはなったけど、なかなか勝てないですね」とぼやいていた。だが、今月5日の楽天戦に7試合ぶりに松田が1軍に戻ると楽天、ロッテと2カード連続勝ち越しの5勝1敗。士気、ムードが徐々に上がってきている。

 「打つ、守る、走るの数字以外に、僕には元気がある。野球は声が一番大事で、僕の武器は声」というのがプロ17年目の松田の持論だ。お祭り男、盛り上げ隊長役を自発的にグイグイやっているようには見えない。ベテランなので、周囲からいじられもしていない。ただ、声や仲間へのいじりが実に的確で瞬発力がある。さらにプレー中も、何かやれば周囲が沸く。

 5日楽天戦は「7番・三塁」で復帰。7月21日の同戦以来のスタメン出場で、足で活気づけた。1―0の初回2死満塁でボテボテの遊ゴロで全力疾走し適時内野安打。一塁ベンチ内の、ほぼ全員が両腕を横にするセーフのジェスチャー。駆け抜けた松田はなぜかコーチャーのように腕をグルグル回し、喜んでいた。あの一打から、何かチーム内の一体感が、フワっと復活したような気もした。

 「この時期は、後半じゃなく終盤。出た時は何とかチームのために、しっかり勢いをつけたい。そういう立ち位置かなと思うし」

 今季は若手の台頭もあり、三塁手としての出番も減った。ホットコーナーでのスタメンは5月26日DeNA戦以来だった。一塁手や代打での起用も増えた。それでも、ベンチで声を張り上げ続けている。バットを振って出番を待っている。自負はずっと変わらない。

 「とにかく必死に、やる。プロ野球選手は必死にやる。松田宣浩という人がプロで17年やってきたのは、そういうスタイルだけなので。ベテランなったからと言って打てる時だけ調子に乗るんじゃなく、試合に出る時も出ていない時も。そのスタイルでユニホームを着ているので」

 藤本監督のもと、20年以来のリーグV奪還を目指すソフトバンク。声のボリュームを大にしなくても松田の必死さ、がむしゃらさは、既に選手内に浸透しているとみる。最後に笑えるか、みんなで叫べるか。勝負の8月は、まだ序盤だ。(記者コラム・井上 満夫)

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2022年8月12日のニュース