【内田雅也の追球】「下駄箱」に対応した阪神・小川とDeNA・ソト

[ 2022年4月21日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神0-1DeNA ( 2022年4月20日    横浜 )

<D・神>8回2死一、二塁、近本は投ゴロに倒れる(投手・エスコバー)(撮影・大森 寛明)
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 大リーグではストライクゾーンが狭い球審を「シューボックス」と言って嫌う。1足分の靴箱の意味で、物の大きさや長さを示す目安に使われる。「小さい」「狭い」という比喩に用いる。

 広いストライクゾーンを表す言葉は知らない。狭いのが靴箱なら広いのは日本の「下駄(げた)箱」だろう。何足も靴を入れるのだから広い。

 この夜の球審は下駄箱ゾーンだった。各局テレビ中継の解説者たちがそろって「広い」と話していた。たとえば、3回表2死二塁で佐藤輝明が1、2球目の外角直球を見送り、ストライクと判定された時、驚いたように天を仰いでいた。

 ただし、当然ながら審判は神聖であり、判定はコントロールできない。打者は揺れる心を落ち着かせ平常心を保ちたい。逆にバッテリーは球審の判定を利用した投球・配球を心がけるべきだ。

 その点で阪神先発の小川一平はよく投げた。7回を2安打無失点。梅野隆太郎のサインにほとんど首を振らず、下駄箱の隅を丁寧に突いていた。

 では打者陣はどうだったか。延長10回零敗。ストライクの見逃しが多いように感じた。数えれば30球あった。特に先発の東克樹には直球の見逃しが目についた。変化球待ちだったのだろうか。

 試合に決着がついたのは延長10回裏、ネフタリ・ソトのサヨナラ本塁打である。1ボール―2ストライクから、真ん中内角寄り高めの直球を右翼席ポール際に運んだ。

 見送ればボールではなかったか。追い込まれていたからゾーンを広げて待っていたこともある。いや、広いゾーンのこともあり、より積極的に打ちに出て、決勝弾としたのだ。判定に対応した打撃姿勢である。

 積極性が薄れていた阪神の打者だが、好機では第1ストライクを打ちに出ていた。たとえば、8回表2死一、二塁、佐藤輝敬遠の後、近本光司は1ボールからエドウィン・エスコバーの内角高めボール気味速球を打ったが、詰まっての投ゴロだった。得点圏で8打席、7打数1安打(糸原健斗遊ゴロ内野安打)でタイムリーは出なかった。

 1点差試合9敗目(1勝)と勝負弱さが際立つ。4月中に借金15は前例がなく、歴史的な惨敗を目の当たりにしているわけである。 =敬称略=(編集委員)

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2022年4月21日のニュース