広陵・中村2発!32年ぶり大会新記録6本塁打「甲子園の力」

[ 2017年8月23日 05:30 ]

第99回全国高校野球選手権第13日・準決勝   広陵12―9天理 ( 2017年8月22日    甲子園 )

<天理・広陵>清原超え新記録だ!5回、広陵・中村は左中間にこの試合2本目で大会新記録となる6号本塁打を放つ
Photo By スポニチ

 伝説の怪物を超えた。準決勝2試合が行われ、今秋ドラフト1位候補の広陵・中村奨成捕手(3年)が天理(奈良)戦で2発を放ち、今大会6本塁打をマークした。1985年に清原和博(PL学園)が記録した5本の1大会個人最多本塁打記録を更新。過去3度の準優勝を誇る強豪は、23日の花咲徳栄(埼玉)との決勝(午後2時開始予定)で初優勝を狙う。

 甲子園が揺れた。放物線を描いた打球は左中間スタンドに吸い込まれる。大歓声に包まれた中村は表情を緩めることなく、胸を張ってベースを一周した。

 「不思議な感覚です。出来過ぎ。凄い場所だと思う。高校球児の憧れ。甲子園の力なのかな」

 1点を追う5回、先頭で2ボールからの3球目、シュート回転した直球を叩いた。初回に弾丸ライナーでバックスクリーンに運んだ先制2ランに続く、同点の今大会6号ソロ。「怪物」と呼ばれたPL学園・清原が85年にマークした1大会最多記録に1本目で並び、2本目で32年ぶりに塗り替えた。

 前人未到の領域に足を踏み入れても、「記録を抜いたことよりも同点になったことの方がうれしい」と、ド派手なガッツポーズを見せることはなかった。ただ、節目の100回大会を迎える前年に史上最強スラッガーが誕生した。歴史的瞬間を目の当たりにしたファンは興奮した。

 清原の記録を超えたが、打者として失格の烙印(らくいん)を押されたことがある。「入ってきた時はとんでもないアッパースイング。諦めようと思った時もあります。“プロゴルファーになれ”とも言ったんです」。中井哲之監督は入学当時の新怪物を回想する。

 驚異的な成長曲線を描いてきた。1メートル81、78キロの体はきゃしゃに見えるが、中村は筋トレを行わない一方で、多くのプロ野球選手が使用する910グラム前後よりも重い、950グラムの木製バットで鍛錬を積む。「崩されても芯で捉える」と説明。バットをしならせる打撃を身に付け、広角にアーチを量産した。

 7回2死満塁で左翼線に走者一掃の二塁打。9回も中前適時打を放ち、5打数4安打7打点と爆発したが、1試合で打率10割を目指しているだけに「80点くらい」と自己採点は厳しい。

 スタンドで見守った女手一つで育ててくれた母・啓子さん(44)への恩返しを誓う。「誰にも追いつけない記録をつくりたい。(母は)満足するなと言うと思う」。試合後には、2発を見舞った碓井涼から「底力」と書かれたカードも渡され、「優勝してくれ」と託された。

 広陵にとって10年ぶりの決勝。過去3度は準優勝だった。「注目されるほどやる気が出る」。初めて夏の頂点に立つために、中村はもう一暴れを誓った。(吉仲 博幸)

 ≪甲子園通算では2位タイ≫広陵の中村が2本塁打を放ち大会通算6本塁打。85年清原(PL学園)を抜き1大会個人最多新記録を樹立した。甲子園での通算6本塁打は桑田(PL学園)、元木(上宮)に並び2位タイとなった。1位は清原の13本。中村はあと1試合でどこまで迫ることができるか。

 ◆中村 奨成(なかむら・しょうせい)1999年(平11)6月6日、広島県廿日市市生まれの18歳。大野東小1年から「大野友星」で軟式野球を始め、大野東中では「大野シニア」に所属。広陵では1年春からベンチ入りし、同夏から正捕手。50メートル6秒0、二塁送球1秒74と俊足強肩も武 器。1メートル81、78キロ。右投げ右打ち。家族は母・啓子さん(44)と妹。

続きを表示

この記事のフォト

2017年8月23日のニュース