WBC存続でも…MLBが抱える「国際化」のジレンマ

[ 2017年3月13日 10:10 ]

星条旗を羽織って米国代表の応援に向かうファン (AP)
Photo By AP

 侍ジャパンがWBC初戦を迎えた今月7日。大リーグ機構(MLB)のロブ・マンフレッド・コミッショナーは、日本外国特派員協会での記者会見で「一級品の野球イベント。これからもっと大きくなると信じている」と大会存続の意向を明言した。06年以降、参加チームも拡大し、現在は182カ国で放送され、約2週間で1億ドル(約115億円)規模のイベントに成長したという。

 一方で、コミッショナー自身も「これからは米国が頑張らないと」と認める通り、米国は過去3大会で決勝進出がない。人気や収入面で最も貢献しているのは日本だという。11日にWBC1次ラウンドのドミニカ共和国―米国戦ではマーリンズ・パーク開場以来最多の3万7446人を動員したものの、大半は米国のファンではなく、ドミニカ共和国を応援する中南米系のファン。いまだに米国人の間での盛り上がりには欠けている。

 米国では世界最高峰のリーグとして100年以上、MLBを育ててきた。ワールドシリーズこそ文字通り野球の世界一を決める大会、との考えも変わらない。同コミッショナーは、「試合時間短縮の手段としてMLBでも引き分けやタイブレークを導入するのか?」との質問に「(導入を)示唆したこともない」と一笑に付した。タイブレークは育成目的のルーキーリーグで導入を検討する程度。「あくまでリーグ戦と国際大会は別物」というコミッショナーの強い意思が垣間見えた。

 20年東京五輪への大リーガー派遣についても、これまで通り開催時期の問題などから前向きな反応はなかった。WBCにも同様の事情で真の最強メンバーを送り込めないMLB。一方で、昨年末に合意した新労使協定では大リーガーがFA権を取得する「実働6年」に近づけるため、海外選手獲得に伴い25歳未満の契約金に著しく制限を加える「26歳ルール」を導入した。数年来、将来的なMLB主導の「国際ドラフト」の実施を求めてもいる。コミッショナーはポスティングにも「KBO(韓国リーグ)、NPB、キューバの全体で通用するルールがあるといい」と私案を披露した。

 イベント拡大や選手獲得には「国際化」を声高に叫びつつ、選手の国際大会出場にはつねに大きな壁がある。WBCは、MLBの抱えるジレンマを浮き彫りにする。(記者コラム・大林 幹雄)

続きを表示

2017年3月13日のニュース