わき汗はなぜ臭いのか。汗を止める方法、匂い対策を皮膚科医に聞いてみた

[ 2023年5月30日 12:00 ]

季節問わず気になる「わき汗」。夏はもちろん、いろいろと着込むことの多い冬も思ったより汗をかいています。夏は薄着のためボディシートで汗を拭くものの、着込んだ季節だと面倒で、防寒インナーがボディシート代わりというパターンも多いのでは。

今回は、そんな汗の悩みにフォーカスし、わき汗が出る理由やニオイの原因・対策について、渋谷スクランブル皮膚科の皮膚科医である下方征(しもかた・ただし)先生に、一問一答形式で聞いてみました。

下方先生、よろしくお願いいたします!

なぜ汗は出るのか。体内での役割とは

汗はどんな役割を担っている?

⇒汗をかくことで体温を一定に保っています。

「ヒトは汗をかくことで、暑い日差しの下や激しい運動時でも体温を一定に保つことができます。汗をかく能力はヒトに与えられた特別な能力で、ほかの哺乳類は汗がかけないため、水浴びをしたり涼しい木陰へ移動することで体温調節を行います。しかしヒトは、体温が上がりそうな状況にあっても、活動を中断することなく、汗をかくことで活動をしながら体温を調整できるよう進化したのです」(下方先生)

ワキ汗は他の箇所より量が多いような……気のせい?

⇒実は、頭や背中のほうが汗量は多いのです。

「ワキ汗は体の他の部位よりたくさんの汗をかく印象があるかもしれません。しかし実際は頭や背中のほうが、ワキよりずっとたくさんの汗を出します。ではなぜ私達は頭や背中の汗よりも、ワキ汗が気になるのでしょうか。それは、汗をかき始める際、最初に出るのがワキ汗だからです。ワキとおでこは体温の変化に非常に敏感で、体温が上がり始めようとするごく初期、まだ体温がそこまで上がっていないときから汗をかき始めます。一方で頭や背中は、いよいよ体温が上がり始めた後半に、大量の汗を出し始めます。少し暑いなと思ったときに出始めるワキ汗に私達は敏感で、生活上の支障を感じるのです」(下方先生)

脇ってみんな匂うの? 無臭の人はいる?

⇒みんなニオイはあります。ただしニオイの強さが異なります。

「多かれ少なかれ、どの人にもワキのニオイはあります。しかし、アポクリン腺が発達している人では、ワキのニオイはより強くなります。アポクリン腺から出る汗にはタンパク質、糖質、脂肪酸、ステロイド、鉄分、アンモニアなどが含まれていますが、これらを含む汗が皮膚にいる細菌(皮膚常在菌)によって分解されることで、臭いの原因物質が発生し、体臭やワキガ臭となります。ニオイの違いやワキガの程度についてはその人の常在菌の種類によっても左右されます。一方で、アポクリン腺が発達していない方では、ワキガ特有のニオイがすることは稀ですが、汗をたくさんかいた後に何もケアをしなければツンと酸っぱい汗のニオイがします」(下方先生)

もしかして腋臭(わきが)!? 気になる人のセルフチェック

ワキガかどうか分からなくて不安。自分で確認する方法はある?

⇒目安として、以下の4項目をセルフチェックしてみましょう。

1.下着のワキの部分に色がつく

「アポクリン腺から分泌される成分によって、白い下着のワキの部分が黄ばむことがあります」(下方先生)

2.その日の終わりにワキの皮膚を触ると、ワックスを塗ったようなベトっとした感じがする

「アポクリン汗は脂肪酸を含み、ワキの皮膚を触れたときにベタつきがあります」(下方先生)

3.耳垢が湿っている

「アポクリン腺が発達している人の場合には、耳垢がカレーペーストのようなベタついたものになります。アポクリン汗が出ない人の場合には、クッキーのクズのような乾いた耳垢が出ます」(下方先生)

4.家族にワキガの人がいる

「アポクリン体質かどうかは、遺伝によります。そのため、家族がワキガの場合には自身にもワキガの可能性があります」(下方先生)

わき汗の匂いを抑える対策方法

わき汗の量が多くて、服に染みが……ニオイや量を抑える方法はある?

⇒4つのポイントを意識しましょう。

1.汗を拭く

「皮膚に付着した雑菌が繁殖してにおいが発生します。汗をかいたらこまめにボディシートなどでふいて雑菌を拭きとりましょう」(下方先生)

2.脱毛をする

「ワキ毛が雑菌繁殖場になり、ニオイが強くなることがあります。医療レーザー脱毛は汗のケアもしやすくなるため、ニオイ予防にも有効です」(下方先生)

3.クリニックで治療する

「ボトックスを注射して、汗を止める治療があります。またワキ汗を止めるマイクロ波治療や手術があります」(下方先生)

4.制汗剤など使用する

「汗を抑える効果(制汗)、肌を弱酸性に保ち雑菌の繁殖を防ぐ効果(抗菌)のある商品を使うと効果的です」(下方先生)

市販品でわき汗対策するときのポイント

スプレーやシート、パウダー、ジェル、ロールオン……いろいろ種類があるけれど、どう使い分ければいい?

⇒使いやすさ、持続性、塗りムラ防止などいろいろな視点で使い分けてみましょう。

スプレー

「スプレーをシューッと吹きかけるだけで広範囲に行き届き、噴霧による爽快感もあるのが特徴です。直接肌に触れないため、衛生的に使えます」(下方先生)

シート

「汗やべたつきが気になるときにさっぱり拭き取ることができるのが特徴です。持ち運びも便利です」(下方先生)

パウダー

「女性の悩みで多い『胸汗』をケアするのにおすすめです。汗のニオイやベタつきが抑えられて、一日中さらさら感が続きます。胸や首筋まわりに使用しやすいのも特徴です」(下方先生)

ロールオン

「手を汚さずにムラなく液体を塗ることができます。外出先などでも手軽に使えるのが特徴です」(下方先生)

スティック

「直で塗り込むタイプなので持続力があり、朝塗るだけでケアしたい人におすすめです」(下方先生)

ジェル

「毛の濃い人はスティックやロールオンだと皮膚に塗ることが難しいこともありますが、ジェルであれば容易に塗ることができ、おすすめです」(下方先生)

わき汗対策にベビーパウダーはよくないの?

⇒ベビーパウダーはあせも予防にはいいけれど……。

「ベビーパウダーは胸やおしりの『あせも』を防ぐ効果はありますが、汗自体を減らすことはできません。ワキガの場合には拭き取りを怠ると、ニオイを悪化させる要因になることもあります」(下方先生)

わき汗対策にミョウバンっていいの?

⇒制汗剤にも使われており、わき汗ケアに期待できます。

「ミョウバンには、汗を抑える、肌を弱酸性に保ち、雑菌の繁殖を防ぐ、アルカリ性のニオイ成分を中和するという3つのはたらきがあります。制汗剤にも使用されているので、わき汗対策として効果が期待できるでしょう」(下方先生)

脇汗パッド(パッドつきインナー)はしたほうがいい?

⇒ニオイを抑える対策としてひとつの選択肢に。

「脇汗パッドも脇汗対策としてはひとつの手段となります。脇汗をすばやく吸収してくれるので、菌が繁殖しにくく、ニオイを抑える効果が期待できます」(下方先生)

ボトックス(ボツリヌストキシン注射)でわき汗とニオイを抑えることはできる?

⇒期待できますが、ワキガ対策にはなりません。

「ボツリヌストキシン注射は、ワキやおでこの汗を抑える治療に使われます。1回の注射で、約4~6か月にわたって汗を抑えることができ、汗の量に悩んでいる方には効果的です。汗の量の減少に伴い汗のニオイも減らすことはできますが、ワキガの原因であるアポクリン汗は抑えることはできません。汗の量も、ニオイも抑えたい場合には『ミラドライ』という多汗症の新しい治療機器(厚生労働省の認可あり)での治療がおすすめです。マイクロ波をワキに照射することで、汗の腺を破壊します。メスなどは使わず、入院の必要も無いため外来で治療が可能です」(下方先生)

[答えてくれたのは]
下方征(しもかた・ただし)
渋谷スクランブル皮膚科院長。東京医科大学病院皮膚科勤務を経て2021年に渋谷スクランブル皮膚科を開業。複数の皮膚科専門医による総合的な皮膚の診療を行う。汗の悩みに関する治療経験多数 。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。

<Text:MELOS編集部>

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