三本の矢は折れない!若隆景、3兄弟の絆で天下獲り 付け人の長男・若隆元の目には涙

[ 2022年3月28日 05:30 ]

大相撲春場所・千秋楽 ( 2022年3月27日    エディオンアリーナ大阪 )

幼少の頃の大波3兄弟(左から)長男の若隆元、三男の若隆景、次男の若元春(大波政志さん提供)
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 決定戦を制し、興奮気味に引き揚げる若隆景を、付け人を務める幕下の長男・若隆元が花道で待ち構えていた。肩に手を添え、三男をねぎらう目はうっすらと潤んでいた。「“やった”という気持ちです。とりあえず“おかげさまで”と」と若隆景は感謝の思いを口にした。

 若隆景が初土俵を踏んだ2017年3月。先代師匠(元小結・大豊)が「三本の矢」の逸話で有名な戦国武将、毛利元就の3人の子供の名前をしこ名につけ、角界での活躍を託した。祖父は元小結・若葉山で、父は元幕下・若信夫の大波政志さん(54)という相撲一家の3人は、若隆元、若元春、若隆景の「大波3兄弟」として注目された。だが、政志さんは「個々に見るとあまり仲は良くないんですよ」と笑う。3人寄れば常にケンカ、そんな時期もあったという。

 それでも改名から5年後に「三本の矢」は強固な「一枚岩」となり、大阪の陣で天下を獲った。若隆景が2、3歳の頃から、ちゃんこ店の切り盛りで忙しい父の代わりに面倒を見てきた若隆元は付け人として「土俵に集中できるようサポートしてきました」と話す。携帯電話の所持を高校生まで認めない方針の父に「もうそういう時代じゃないし、俺がお金も全部出すから」と提案して、中学2年だった三男の携帯電話代を肩代わりしたこともあった。

 若元春は後から入った弟に十両昇進で先を越され奮起。今年初場所で入幕し、2場所連続で9勝を挙げ弟を追い掛けている。1メートル86、136キロと3兄弟の中では最も大柄で左四つの正統派。「(弟に)引っ張ってもらって上がってきた。兄弟だからこそ意識することもある」と激しいライバル心で良き稽古相手になっている。

 若隆景は生まれた時は3兄弟では最も小さい約3600グラム。小学1年で相撲を始め、政志さんは「体が小さくて、ガリガリ。小学校時代は全く勝てず、大きな大会でも指をくわえて見ているだけだった」と振り返る。いつも兄貴に負けて泣いていた三男坊が相撲一家の夢をかなえた。福島人らしく、「絆」がもたらした快挙だった。

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2022年3月28日のニュース