パラ担当記者が見た北京大会 戦争の質問に答える選手に違和感…「平和の祭典」競技専念できる環境を

[ 2022年3月15日 06:10 ]

北京パラリンピック閉会式で国旗を振る各国の旗手(ロイター)

 北京冬季パラリンピックは13日に閉幕した。日本は98年長野大会に次いで多い金4個に輝き、銀1、銅2の合計7個のメダルを獲得。選手の活躍の裏では、ウクライナが侵攻されたことを受け国際パラリンピック委員会(IPC)が開幕前日にロシアとベラルーシの除外を決定する波乱の幕開けだった。平和の祭典とは――。現地で取材したパラリンピック担当の滝本雄大記者(25)が総括した。

 日本選手団をけん引したのは、ともに大役を担った20代選手だった。主将を務めたアルペンスキー女子座位で25歳の村岡桃佳(トヨタ自動車)が3冠と銀1個の貫禄。ノルディックスキー距離立位では、旗手を務めた21歳の川除(かわよけ)大輝が20キロクラシカル金で、新エースに名乗りを上げた。

 一方、世代交代が進んでいないことも否めない。顕著なのは、平均年齢35・4歳のアルペンスキー男子だ。メダル獲得は座位で41歳の森井大輝(トヨタ自動車)の銅2個のみ。座位回転は20代前半が表彰台を独占し、立位では21歳のアルトゥル・ボシェ(フランス)が3冠と銅1個に輝くなど、各国で00年生まれの活躍が目立った。日本障害者スキー連盟の夏目堅司アルペン委員長は「課題は若手の育成。発掘して育てるプランを確立させないとまずい」と危機感を口にしており、競技普及を含めたシステム構築は急務だ。

 選手たちが競技に集中できるような環境ではなかった。ロシアから侵攻されているウクライナのリュドミラ・リアシェンコは、東部ハリコフの自宅を爆撃で破壊され、直後の7日の競技を棄権。日本選手団には「本当に悲しい。自分たちが平和の祭典に参加している一方で、家がなくなって隣国に逃げないといけない人たちがいる」と複雑な心境を漏らす選手もいた。

 各国の選手たちが、競技についてではなく、戦争について答えている取材には違和感を覚えた。本来なら、各国と交流できるはずの平和の祭典――。アスリートたちが、スポーツに専念できる環境が訪れることを願う。(パラリンピック担当)

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2022年3月15日のニュース