恩師も驚嘆したフィギュア三原舞依の人間性「こんな素敵な子がいるんだな」

[ 2022年1月5日 13:10 ]

フィギュアスケートの三原舞依(撮影・小海途 良幹)
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 夢舞台には、わずかに届かなかった。北京五輪の最終選考を兼ねた昨年末のフィギュアスケート全日本選手権。SPで5位発進となった三原舞依(22=シスメックス)は、巻き返しを図ったフリーでも5位にとどまり、総合4位に終わった。結果的に五輪切符をつかんだ3位河辺愛菜とは2・79点差だった。

 フリーを終えた後に本人が「悔しい」という言葉を連呼したように、ミスもあった演技には後悔の思いが募った。だが、これまでの道のりを考えれば、日本一を決める場所に立ち、五輪出場を争ったことだけでも奇跡に思える。体調不良により19―20年シーズンを全休。昨季にようやく復帰を果たし、練習も制限された中でたどり着いたのだから。

 不断の努力は、ある人を通じて定時制高校の生徒にも伝わっていた。三原が通った県芦屋高で2~3年時に担任を務めたのが三宝健太郎教諭(36、写真)。19年からは三田市に位置する有馬高定時制課程で保健体育を教えている。

 「スーパースペシャルな頑張り屋。フィギュアスケートをしていること、1年生の頃に入院していたことなどは聞いていましたけど、実際に担任をしてみて“こんな凄い子がいるんだ”と驚かされました。教師という立場でしたけど、一人の人間として“こんな素敵な子がいるんだな”と思っていました」

 朝練を終えてから学校に来て、6~7限目までの授業を終えてから午後の練習に行く。多忙を極めているにもかかわらず、テストでも高得点を取るなど学業とスポーツを両立。「後ろ向きなところも全くなく、つらいことでもプラスに変える」とうなずく。

 幾多の試練を乗り越えてきた教え子は今、再びトップレベルで戦っている。その頑張りを、定時制高校に通う生徒にも伝えている。

 「ホームルームの時に三原さんの1日の生活を紹介して“こんなに目標に向かって頑張っている子がいるんだよ”“順風満帆じゃなくても結果を出している子がいるんだよ”と話したりしています。今の学校には、以前は不登校だった子も多い。勉強についていけなかったり、人間関係などで一度は挫折したけど、また向き合いたいと思っている純粋な子が多いんです。その生徒たちに話をすると“自分も頑張ろう”と思える子もいる」

 本番に臨む前、いつも階段を上がって会場の一番上まで足を運ぶ三原。そこには、最上部の席の人も感動する演技を目指したい、という思いが込められている。五輪には届かなくても、全日本の演技後にはスタンディングオベーションで称えられた。その舞は、画面越しで応援した人たちの心も揺さぶったはずだ。(記者コラム・五輪担当・西海 康平)

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2022年1月5日のニュース