アメフト京大 81歳の水野弥一氏が現場復帰してまで伝えたいこと「何かを得たいなら…」

[ 2021年10月18日 05:30 ]

関西学生アメリカンフットボール1部リーグBブロック   京大0-45関学大 ( 2021年10月17日    王子スタジアム )

<関学大・京大>観戦する京大・水野弥一アドバイザー(撮影・成瀬 徹) 
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 鋭い視線の先で、「教え子」たちは苦闘していた。80~90年代に数々の名勝負を演じ、カードが特別視された「関京戦」に、かつての輝きはない。勝者と敗者を明確に分ける0―45。スタンドから見守った水野弥一氏(81)の顔に、どうしようもなく寂しい笑みが浮かんでいた。

 「ちょっと(関学大と京大の)質が違いすぎますな。悔しいというか、悲しいというか…。もう少し、まともに戦うかと思っていたが…」

 1974年から37年間、京大を率い、一時代を築いた名将。強烈なカリスマと独特な指導で、国公立大として唯一となる甲子園ボウル優勝を6度も成し遂げた。2011年に勇退後も、追手門学院大などで指導。現在、京都両洋高ヘッドコーチを務める81歳の同氏に、名門再建を託す声がかかったのが今春だった。

 「相原監督から“力になってくれ”と言われてね。まあ、いろんなことを話できたら、と思って引き受けたわけですわ」

 アドバイザーとして、週に1~2度、グラウンドへ足を運ぶ。学生の気質は日本一を争った30年前、退任した10年前と比較しても、明らかに違う。スポーツの持つ危険度に対する許容は狭くなり、一時代前の厳しい指導は受け入れられにくい風潮がある。「今の学生に一番伝えたいことは?」の問いに、少し考えてから水野氏はこう言い切った。

 「もっと強くなれ、自分に厳しくなれ、ということでしょうな。勝つ、という信念があるから、昔は徹底的にやっていた。強くなるということは限界を超えること。何かを得たいなら、リスクを冒してやらなあかん」

 時代の変化は、もちろん理解している。それでも、当世風に迎合するつもりなどない。開幕2連敗でブロック3位以下が決まり、京大は今年も日本一への道を絶たれた。「コーチ?言われたら、何でもやりますよ」。不可能を可能にしたあの頃と同じように、水野氏の瞳には反骨の炎が宿っている。

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