“ひねり王子”白井が現役引退 一時代築いた24歳「未練ない」、6つの「シライ」次世代へ伝承

[ 2021年6月17日 05:30 ]

現役引退を表明した白井は花束を手に晴れやかな笑顔を見せる
Photo By 共同

 体操男子で16年リオデジャネイロ五輪団体総合金メダルの白井健三(24=日体大教)が16日、横浜市の日体大健志台キャンパスで会見し、現役引退を表明した。驚異のひねりを武器に床運動、跳馬で計6個、自身の名がつく技を保持。東京五輪の代表に届かなかった“ひねり王子”は、日体大男子のコーチに転身し、後輩に「シライ」を伝承していく。

 完全燃焼した24歳に涙はない。「スッキリした状態で現役生活を終えることができた。選手としての未練は一つもない」。周囲には早過ぎると映る決断も、白井にとっては既定路線だった。

 引き際を最初に意識したのは16年リオ五輪の頃という。「東京までかな、と頭の片隅にあった」。新型コロナウイルスの影響で昨年3月、東京五輪が延期に。自粛生活が明けると、「東京のシーズンをやり抜いたところで引退しよう」と気持ちは固まった。

 体育館でともに汗を流す学生を見て、自身の変化にも気づいた。「自分に向けてのエネルギーより、教える喜び、学生に向けるエネルギーが強くなった。選手としての去り時は今だな、と」。指導者への転身を明確に描いた。

 内村航平が「ひねりすぎて気持ち悪い」と評した鋭いひねりを武器に、17歳で出場した13年世界選手権の床運動で日本史上最年少の金メダル。これまで床運動と跳馬で3つずつ「シライ」の名を技に刻んだ。17年世界選手権では個人総合で銅メダルを獲得。だが、近年は故障もあり、苦しい戦いが続いていた。

 現役最後の舞台となった6日の全日本種目別は床運動2位、鉄棒7位。東京五輪に届かなかったが、家族が見守る中で精いっぱいの演技を披露した。今後は日体大男子のコーチとして、後進の育成に励む。「白井健三の教え子だから“シライ”ができるんだって思ってもらえるような教え子が誕生したら、面白いかな」。競技人生は終わっても、体操人生はこれからも続く。

 【「シライ」の名がつく技】
 《床運動》
 ☆シライ/ニュエン(後方伸身宙返り4回ひねり)F難度
 ☆シライ2(前方伸身宙返り3回ひねり)F難度
 ☆シライ3(後方伸身2回宙返り3回ひねり)H難度
 《跳馬》
 ☆シライ/キム・ヒフン(伸身ユルチェンコ3回ひねり)難度を示すDスコアは5・6点
 ☆シライ2(伸身ユルチェンコ3回半ひねり)Dスコア6・0点
 ☆シライ3(シェルボ2回ひねり)Dスコア5・4点

 ◇白井 健三(しらい・けんぞう)1996年(平8)8月24日生まれ、横浜市出身の24歳。2人の兄の影響で3歳で体操を始めた。寺尾中3年だった11年の全日本種目別の床運動で2位に入り、注目を集める。世界選手権では床運動3度制覇など計11個のメダルを獲得。16年リオ五輪では団体金、種目別の跳馬で銅メダルだった。1メートル63、54キロ。

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