H難度習得、内村航平の「言と知と」 4回転半に挑む羽生結弦のヒントになるか

[ 2021年4月21日 17:00 ]

内村航平(左)と羽生結弦
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 上下の軸で横に回る。体操では「ひねり」となり、フィギュアスケートではジャンプなどの「回転」となる。

 体操で現在、「ひねり」の回数がもっとも多いのは、床運動で白井健三(日体大助教)の名がつく、「シライ/ニュエン」(後方伸身宙返り4回ひねり)。フィギュア男子で五輪連覇の羽生結弦(ANA)が成功を目指しているクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)は、単純な回転数では体操界の上をいく。内村航平(ジョイカル)は、フィギュアの超大技をこう表現した。

 「体操より、ひねってますから。4回転半ですからね。ありえないっすよね」

 個人的に気になっていた羽生の言葉がある。3月28日、世界選手権を終えた後のオンライン取材。「アクセルを練習していく中で『ああ、跳べないな』とか絶望感を味わった時に、どうやって乗り越えていくか。どうやって自分に頑張っているっていう報酬を与えてあげるか」。4回転半に挑み続けるであろう、オフを見据えてのコメントだった。

 五輪連覇の個人総合ではなく、鉄棒に専念して東京五輪の金メダルを狙う内村は、30歳を過ぎてH難度「ブレトシュナイダー」を習得した。その過程は、いばらの道だったのではないか。そう思ったから、先の羽生の言葉を内村に伝えた上で、聞いた。「思い通りにいかない時、どうやって乗り越えたのか」と。

 腕を組んで少し考えた内村は、「できない方が面白いんすよね、自分」と話した。「欲しいものがあって実際に買ったら『う~ん』ってなることってあるじゃないですか。買うまでが楽しい、みたいな」。長いキャリアの中で、試合で投入すると想定よりも魅力に欠けた技があったのだろう。

 では、執念を燃やした「ブレトシュナイダー」はどうか。「ブレトシュナイダーはできるようになったら、めっちゃ嬉しかったですよ。うん、めっちゃ嬉しかったな」。欲しいものをゲットし、気に入って手放さない。そんな子供のような、無邪気な笑みがそこにはあった。

 これは羽生へのアドバイスではない、と個人的には感じている。かつて内村は羽生について、「こうした方がいい、とかは思わない」と話していた。シンプルに自らが経験して学んだこと、知っていることを口にするのみ。自身のコメントが羽生に伝わったとしても、その解釈は羽生に委ねる。何かのヒントになればいいし、ならなければ、それもまたいい。そのスタンスは、リスペクトと同義だろう。

 内村から、何か言えることがあるとすれば。「ケガには気をつけてほしい。やっぱり調子が悪かったりすると、早く足も降りちゃうと思うので」とした上で、こう続けた。

 「羽生君なら、僕はできると思っている。成功したら、めっちゃ見てみたい」

 4月。内村は「ブレトシュナイダー」を決めた全日本選手権で高得点を連発し、東京五輪代表選考を好発進した。羽生は世界国別対抗戦でシーズンを締めくくり、4回転半の実戦投入を見据えて、また汗を流す。

 それぞれの究極の目標へ。「夏の王」と「冬の王」の情熱は交錯しながら、季節は巡っていく。(杉本 亮輔)

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