IOC、森会長発言“不問”一転「完全に不適切」…進退問題触れずも“最後通告”

[ 2021年2月10日 05:30 ]

東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長
Photo By 代表撮影

 国際オリンピック委員会(IOC)が手のひら返しで東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)に“最後通告”を突きつけた。女性蔑視とも取れる森会長の発言を不問とする姿勢を示していたが、9日に一転、「完全に不適切」と批判する声明を発表。進退問題には触れなかったものの、辞任を迫る声が相次ぐ中で頼みとするIOCにも突き放され、森会長は追い込まれた形となった。

 強烈な表現だった。IOCの公式サイトに掲載された「オリンピック・ムーブメントにおける男女平等に関する声明」は、森会長の発言を「ABSOLUTELY INAPPROPRIATE(完全に不適切)」と断罪した。発言があった翌日の4日、森会長の謝罪会見を受けて「問題は決着したと考えている」と不問にした声明とは正反対。国内外の世論や選手、スポンサーからも非難の声が続出したため、軌道修正を図ったとみられる。

 声明では「過去25年間、IOCはスポーツにおける女性の進出に重要な役割を果たしてきた」とIOCの立場を強調。その上で「森会長の最近の発言は完全に不適切でIOCのコミットメントと(大会を見直す)五輪アジェンダ2020の改革に矛盾している」とバッサリ斬り捨てた。森会長の進退には言及しなかったが、11項目に及ぶ取り組みの成果を示しながら「IOCは男女平等や反差別などの取り組みを引き続き提供していく」と日本とは“別路線”であるかのように記した。

 森氏は3日の日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと発言。4日に撤回して謝罪したものの、発言後の5日間で大会ボランティア約390人が辞退する事態に発展した。JOCの山下泰裕会長はこの日、定例会見で発言を「極めて不適切」と表現しながらも「発言自体の是非について改めて述べる必要はない」と責任を追及しない構えを見せた。政府や大会関係者からも厳しい意見が出る一方、世論で吹き荒れている森会長の辞任要求までには発展していないのが現状だ。

 しかし、IOCによる批判は、森会長と信頼関係を築いてきたバッハ会長の失望を表し、組織委トップにとって強力な後ろ盾を失うことを意味する。組織委は12日に理事会と評議員会メンバーによる臨時合同会合を予定しており、森会長が改めて謝罪した上で有識者に意見を求める方針。IOCの手のひら返しが森会長の進退に与える影響が注目される。

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2021年2月10日のニュース