イ・ボミの今~台所で気分転換 主戦場の日本女子ツアー開幕を母国韓国で待ちながら
コロナウイルスの感染拡大により日本の女子プロゴルフツアーは3月第1週の開幕戦から5月最終週の第13戦まで既に中止が決まっている。いつ開幕するのか。全く先が見通せない状況の中、賞金シード選手の26%を占める外国勢は日々、どのように過ごし、どのような不安を抱えているのか。母国・韓国で調整を続ける15、16年の賞金女王イ・ボミ(31)に聞いた。
世界的なコロナウイルス感染拡大が進む中、イ・ボミは家族のいる韓国にとどまってシーズン開幕に備えることを選んだ。今は親族が経営するシミュレーションゴルフスタジオやゴルフ場などで調整を続けている。練習量は通常のこの時期の半分以下だという。
「全世界がコロナの影響を受け、私たちプロも例外ではない状況の中で、必要最低限の練習以外は外出を自粛しています。ゴルフを始めてから今まで休む間もなく必死でした。なので、少しゆっくりできると初めは思っていましたが、開幕が予想以上に先送りになりました。少し戸惑っていますが、この期間も開幕に向けた練習期間だと思い、焦らず準備に励んでいます」
先行き不透明な状況の中、不安もあるが、そんな時は台所で気分転換。「最近は料理も楽しんでいますし、旦那さんもおいしいと食べてくれるのでハマっています」と昨年12月に結婚した俳優イ・ワンと互いに支え合いながら日々、トレードマークの笑顔で過ごすことを心掛けている。
コロナウイルスの感染拡大が進む日本と異なり、韓国国内は沈静化に向かっていると言われる。新たなコロナウイルス感染者は、1日で900人を上回った2月29日をピークに減少に転じ、4月以降は1日50人を下回る日も増えている。第2波、第3波への懸念はあるが、現在は入院などの隔離措置を解かれた回復者の数が新規感染者を上回っている。
韓国女子プロゴルフ協会(KLPGA)は5月14日から4日間の日程で国内メジャー、KLPGA選手権を実施すると発表。シーズン開幕に向けた動きも出始めた。
「ゴルファー仲間とは連絡を取りながら情報共有をしています。日本で試合がなく、韓国が先に開幕を迎えた場合は、そこも視野に入れて準備をしたいと考えています」
コロナウイルス感染拡大の状況や韓国政府の方針などにより韓国ツアーの5月開幕は依然、流動的だが、イ・ボミ、申ジエ、アン・ソンジュら日本で活躍する韓国勢には韓国ツアーの長期シード保持者も多くイ・ボミの参戦にも障害はない。イ・ボミらに加え、朴仁妃(パクインビ)、柳簫然(ユソヨン)ら米ツアーで活躍する世界ランク1位経験者も参戦すれば、世界最高レベルのツアーが開幕することになる。
◆「お会いできる日を楽しみに」
賞金ランク83位と低迷した一昨年から昨年同21位まで復調してきたイ・ボミはさらなる飛躍を目指して使用クラブを一新。1W、アイアンともに自らの名前を冠したホンマの限定モデルで新シーズンに臨む。コロナ禍のため長いシーズンオフを余儀なくされているが「(ホンマの)TR20の私のモデルで、シャフトがピンクです。ドライバーは確実に距離も出るし、アイアンも満足しています。今はスイングバランスを重点に練習しています。良くなってきていて楽しみながらできています。目標は常に毎試合最善を尽くし、優勝することに変わりはありません」とポジティブに現状と向き合っている。
今季の賞金シード選手50人のうち外国勢は韓国10人、台湾1人、タイ1人、米国1人。この4カ国はいずれも日本政府によって入国拒否の対象となっている。昨年LPGAツアー選手権など2勝を挙げて賞金ランク4位に食い込んだペ・ソンウ(韓国)、同41位エイミー・コガ(米国)のように日本で調整を続けている選手もいるが、日本国外にいるツアー仲間に対し、日本人選手の間からは入国制限が解除されない状況のままでの日本ツアーの開幕は不公平ではとの声も上がっている。
「今の私の主舞台は日本ツアーです。日本ツアーが開幕するのを待ち望んでいます。全世界で多くの人々が苦しんでいます。これ以上、被害が大きくならないよう心を一つに頑張りましょう。そして、みんなに元気な姿でまたお会いできる日を楽しみにしています」
コロナウイルス感染の早期終息を願って日本のファン、ツアー仲間にエールを送った。
《男子ツアー シード約半数が外国籍 救済案を模索中》男子ツアーも今季国内第1戦から5月までの5大会の中止が決まっており、開幕が見通せない状況となっている。イベント自粛による新型コロナウイルス感染拡大防止に加えて、今季のシード選手65人中31人が外国籍というツアーメンバーの構成も中止判断の要因の一つだ。
選手会には外国人選手からの声が届いており、選手会長を務める時松隆光は「外国人選手が日本に来たくても来られないアンフェアな状況になっています。何らかの手を打たないといけないと思っています」と対策の必要性を語る。同副会長の石川遼も「日本がいろいろ制限をかけている状況の中でツアーを行うのは個人的には支持しない。彼らも日本ツアーに貢献している」と配慮を求めている。
関係者によると、日本ゴルフツアー機構(JGTO)は外国人選手への救済措置を検討しているという。ツアーが再開した際に、入国できない選手が不利益を被ることのない方法を模索。賞金シード枠の拡大や公傷制度の拡大適用など複数の案が出ているようだ。
◆イ・ボミ 1988年8月21日生まれ、韓国京畿道水原市出身の31歳。12歳からゴルフを始める。07年プロ転向。10年に韓国ツアーで賞金女王に。11年から日本ツアーに主戦場を移し、12年ヨコハマタイヤPRGRレディースで同ツアー初優勝。15、16年には2年連続で賞金女王に輝いた。15年の年間獲得賞金額2億3049万7057円は男女を通じての日本ツアー最高額。日本通算21勝(うちメジャー2勝)。韓国・建国大出身。1メートル58、56キロ。血液型A。延田グループ所属。愛称はスマイル・キャンディ。
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