子どもたちにラグビーボールを――近鉄・正面健司の新たなチャレンジ

[ 2020年3月23日 11:30 ]

ラグビー近鉄・正面健司は小学生に寄贈するボールを手にする
Photo By スポニチ

 意義ある“副業”だ。ラグビーの近鉄SO/FB正面健司(36)は昨夏、オリジナル服のインターネット販売を、受注生産の形で始めた。

 「意義」と記したのは、売上の一部を慈善活動にあてているからだ。自宅がある神戸市東灘区の小学校に、1校につき3個、ラグビーボールを贈る準備を進めている。ひとまず、100個できあがった。新型コロナウイルスの騒動が収束した頃に、各校を訪問する予定だ。

 「W杯の後、自分の子どもと一緒に公園に行くと、毎日、子どもたちがラグビーをしているんです。でも、持っているボールは、バレーボールだったり、サッカーボールだったり、丸い形ばかりで。ラグビーボールを持ってほしい、それで小学校に寄付をしようと思いました」

 最初の寄付は、障害者施設だった。現金を渡した。障害がある方の力になろう。その思いを抱く一方、公園の子どもたちの光景を寂しく思った。

 「みなさん、ラグビーの正面ということで服を買ってくれている。ラグビーに恩返しをせなアカンと思って」

 近鉄に移籍した昨年、起業家の知人に「服を作ってみないか」と誘われ、未知のチャレンジを始めた。東海大仰星、同大、トヨタ自動車、神戸製鋼と強豪でキャリアを積み重ねたラグビー界の有名人とはいえ、「僕で売れるのか」と抵抗があった。広い視野と絶妙のタイミングで仕掛けるランでプレーは目立つが、性格は控え目。面白いことを言う割にはオレがオレがと主張するのは苦手で、「お金目が当てか――」、「まずラグビーを頑張れよ――」と言わないか、周囲の反応が気になった。

 新しい何かを生み出し、それが自分の助けや、誰かの喜びにつながるのであれば、それはとても尊いことなのに、悩んだ。しかし、慈善活動とセットという仕組みに、新鮮味を覚えた。近鉄サイドも快く応援してくれた。

 始めてみると、自分にも変化が現れた。これまで、ファンサービスに消極的だったが、「自分を知ってもらいたい」とサインや撮影、SNSに積極的になった。ファンとの距離が近くなった。競技のエネルギーになった。

 36歳。現役生活はそう長くない。このビジネスが、プロ選手の悩みの種であるセカンドキャリアの構築につながるかは不透明だが、「プロとしてこういう活動があると気付けた。ラグビーの価値、自分の価値を高められる取り組みだと思う」と、充実感を得ている。

 19年シーズンは、元オーストラリア代表の世界的SOクウェイド・クーパー(31)の分厚い壁があったとはいえ、7戦中6試合で途中出場し、下部リーグ優勝を支えた。

 ちなみに、Tシャツやパーカーの胸には「#SHOW MEN」のロゴが入っている。司令塔だから、エンターテイナーを指す「ショーマン」の複数形。それに、名字の「正面」をかけている。背中側には「#HI MEN」(やあみんな)の文字。前が「#SHOW MEN」(正面)で、後ろが「#HI MEN」(背面)。ユーモアが効いている。プレー同様、人を楽しませる性格の持ち主である。(倉世古 洋平)

続きを表示

「羽生結弦」特集記事

「NBA」特集記事

2020年3月23日のニュース